高岡暴力団組長夫婦射殺事件

事件概要

2000年7月13日、富山県高岡市において、指定暴力団の組長とその妻が、元暴力団組長Wと中国籍のBによって射殺されるという衝撃的な事件が発生しました。警察の捜査により、元組長のWが逮捕され、その後の取り調べで、Wは当時被害者組長のナンバー2であったIから組長殺害を依頼され、拳銃を渡されたと自供しました。この供述に基づいて、共犯としてBとCも逮捕されました。

裁判の経過

裁判では、主犯のWは犯行を認めたものの、計画性を否定しました。しかし、2004年3月26日、富山地方裁判所はWに対し死刑判決を下しました。この判決は、2006年2月16日に名古屋高等裁判所金沢支部でも支持され、Wの控訴は棄却されました。さらに、2009年1月22日には最高裁判所も上告を棄却し、Wの死刑判決が確定しました。最高裁は、報酬目当ての犯行であり、命乞いをする妻まで射殺した残忍性を重く見ました。

一方、BはWの指示に従って行動したに過ぎず、見張り役としての役割だったとして、懲役18年の判決が確定しました。

もう一人の主犯であるIは、組長の妻の殺害は依頼されていないと主張しましたが、2005年1月27日、富山地裁は、妻の殺害も十分認識していたと判断し、Iにも死刑判決を言い渡しました。この判決も、2006年10月12日に名古屋高裁金沢支部で支持され、2009年3月25日に最高裁で上告が棄却され、Iの死刑判決も確定しました。

副組長の逮捕と無罪判決

さらに、Iの供述によって、D副組長も組長殺害に関与した疑いで逮捕・起訴されました。しかし、Dは一貫して無罪を主張し、富山地裁はDの自白の信用性に疑問があるとして無罪判決を下しました。2008年4月17日には、名古屋高裁金沢支部も一審判決を支持し、検察側の控訴を棄却したため、Dの無罪が確定しました。

死刑確定後の結末

Wは2009年4月16日、収容先の名古屋拘置所で吐血し、食道静脈瘤と診断されて入院しましたが、5月2日に肝不全による出血性ショックで死亡しました。56歳でした。Iも名古屋拘置所に収監され、再審請求をしていましたが、2014年7月16日に肝臓がんで病死しました。67歳でした。

このように、主犯格であるWとIは死刑が確定したものの、いずれも刑が執行されることなく病死するという異例の結末を迎えました。

補足情報

最高裁によると、死刑求刑に対して一審、二審と続けて無罪判決が出るのは極めて異例であり、この事件は、過去に同様の事例がわずか数件しかないうちの一つでした。また、死刑を求刑された事件で一審が無罪になった事例は、他にも複数ありますが、いずれも複雑な経過をたどっています。

さらに、死刑が確定した事件で再審により無罪となった事例も4件存在しています。

この事件は、暴力団内部の抗争と、その後の裁判の複雑さを物語るものとして、注目を集めました。

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