高岡迪

高岡迪（たかおか すすむ、1912年〈明治45年〉2月24日生 - 1999年〈平成11年〉2月6日没）は、日本の海軍軍人から後に航空自衛官となった人物である。最終階級は海軍中佐および空将補。特に、日本航空史上初めての国産ジェット機である「橘花」や、戦後初の国産ジェット練習機「T-1」の試験飛行を担当したことで知られる、日本の航空史における重要な先駆者の一人であった。香川県の出身。

旧制香川多度津中学校を経て、1932年（昭和7年）11月に海軍兵学校を第60期生として卒業した。当初は艦上攻撃機の操縦を専攻したが、後に艦上爆撃機へと転科している。太平洋戦争中、彼は主に海軍航空技術廠および横須賀海軍航空隊において、航空機の試験飛行を行うテストパイロットの任務に従事した。この時期、日本の航空技術開発の最前線で、新型機や改良機の性能評価に携わっていたと考えられる。特に、終戦間際の1945年（昭和20年）8月には、日本が開発した初のジェット機である「橘花」の試験飛行を担ったことは、彼の経歴の中でも特筆すべき業績である。終戦時の階級は海軍中佐であった。

戦後、高岡氏は新たな日本の防衛組織として発足した航空自衛隊に入隊した。ここでも彼はパイロットとしての経験を活かし、日本の航空技術の復興と発展に貢献していく。特に、戦後初めて国内で開発されたジェット練習機であるT-1Aの初飛行を担当したことは、海軍時代の「橘花」に続く、国産ジェット機の開発における重要な役割であった。航空自衛隊では、テストパイロットとしての経験に加え、部隊指揮官としても活動し、1961年（昭和36年）7月には第4航空団司令の要職に就任している。しかし、この司令在任中の1962年（昭和37年）6月に、所属隊員による亡命未遂事件が発生するという不測の事態が起こった。高岡氏は、この事件の責任を取る形で、同年9月に航空自衛隊を退官することとなった。航空自衛隊における最終階級は空将補であった。

航空自衛隊退官後は、新三菱重工業に入社し、民間航空機産業の分野でも活動を続けた。同社には1974年（昭和49年）まで在籍している。

彼の波乱に富んだ経歴を年譜形式でより詳細に追うと、以下のようになる。海軍兵学校卒業後、1934年（昭和9年）4月に海軍少尉に任官し、1935年（昭和10年）11月には中尉に進級した。1937年（昭和12年）11月15日には大村海軍航空隊附となり、同年12月1日には空母「蒼龍」に乗組。1938年（昭和13年）6月1日に海軍大尉に進級後、同年12月1日には横須賀海軍航空隊分隊長兼教官を務め、パイロット育成にも携わった。その後、再び空母「蒼龍」（1939年12月7日）や空母「飛龍」（1940年9月16日）で分隊長を務め、空母航空隊の指揮官として活躍した。1941年（昭和16年）8月15日に横須賀鎮守府附となった後、同年9月10日からは海軍航空技術廠飛行実験部部員として、テストパイロットとしての本格的な活動を開始する。1942年（昭和17年）11月1日に海軍少佐、1945年（昭和20年）9月5日には終戦直後に海軍中佐に進級している。同年9月20日には予備役に編入され、海軍でのキャリアを終えた。

戦後の1954年（昭和29年）10月30日、航空自衛隊に入隊し、2等空佐に任命された。新しい組織で再び日本の空を守る任務に就いたのである。1956年（昭和31年）8月16日に1等空佐に昇任。1958年（昭和33年）4月24日には技術研究本部岐阜試験場長 兼 実験航空隊長という、航空技術の研究開発と試験飛行部隊の指揮を兼ねる重要なポストに就いた。1960年（昭和35年）8月1日には第16飛行教育団司令 兼 築城基地司令、そして前述の1961年（昭和36年）7月17日には第4航空団司令 兼 松島基地司令を歴任し、部隊指揮官としての手腕を発揮した。1962年（昭和37年）7月1日には空将補に昇任したが、直後の8月1日に航空幕僚監部付となり、9月11日に退官の道を歩んだ。

1999年（平成11年）2月6日に86歳で逝去。その功績に対し、正五位が追叙された。高岡迪は、日本の航空史におけるジェット機の黎明期において、その身をもって新たな技術の実用化に貢献した、稀有なパイロットであり指揮官であったと言えるだろう。

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