大村海軍航空隊

大村海軍航空隊

大村海軍航空隊（おおむらかいぐんこうくうたい）は、日本海軍の航空部隊の一つです。主に搭乗員の訓練を目的として、様々な機種の訓練を行っていました。太平洋戦争末期には、防空任務や特別攻撃にも参加しました。また、大村空から独立した分遣隊が、それぞれ元山海軍航空隊、諫早海軍航空隊、釜山海軍航空隊として独立しました。

沿革

ワシントン海軍軍縮条約後、海軍は航空戦力の増強を図り、そのために教育航空隊の拡充が必要となりました。そこで、東日本に霞ヶ浦海軍航空隊、西日本に大村海軍航空隊が設置されることになりました。大村は、佐世保鎮守府に近い平坦な海岸に滑走路が設けられ、横須賀、佐世保、霞ヶ浦に続く第五の海軍航空隊として開隊しました。

開隊当初は、大陸に近い航空基地として、日華事変の際には木更津海軍航空隊の渡洋爆撃の中継基地として機能し、佐世保海軍航空隊の戦闘機隊も駐留していました。

太平洋戦争開戦まで

1922年（大正11年）12月1日：開隊。
1929年（昭和4年）11月1日：佐世保鎮守府の航空母艦「加賀」就役。艦載機隊を大村空で編成。
1930年（昭和5年）8月：航空訓練に参加、水平爆撃を実施。
1935年（昭和10年）2月：無線航法実験を佐世保海軍航空隊と合同で実施。
1936年（昭和11年）3月27日：朝鮮移動訓練中、京城飛行場格納庫火災に遭遇。
1936年（昭和11年）4月20日：海軍航空技術廠で九四式艦上爆撃機が完成、要員を派遣し実機訓練を実施。
1937年（昭和12年）7月11日：盧溝橋事件対策のため、第十三航空隊を編成し、30機（戦闘機12機・艦爆18機）を派遣。
1937年（昭和12年）8月8日：第一連合航空隊木更津海軍航空隊が大村に進駐し、渡洋爆撃を実施。
1938年（昭和13年）2月22日：十三空を陸攻隊に改編、旧要員は帰還。
1938年（昭和13年）6月25日：武漢攻略作戦に備え、第十五航空隊を大村で編成（陸攻6機・戦闘機12機・艦爆12機）。
1938年（昭和13年）12月1日：武漢攻略完遂、十五空は解散し大村に帰還。
1939年（昭和14年）4月1日：佐世保鎮守府の航空母艦「飛龍」就役。艦載機隊を大村空で編成。
1940年（昭和15年）11月15日：博多海軍航空隊開隊に伴い、第十二連合航空隊（大分海軍航空隊・宇佐海軍航空隊）に編入。

太平洋戦争開戦後

1941年（昭和16年）10月1日：第二十一海軍航空廠を併設。
1941年（昭和16年）12月8日：太平洋戦争開戦に伴い、九州西岸～対馬海峡の対戦哨戒を開始。
1942年（昭和17年）3月26日：東シナ海に敵潜水艦が侵入。4月3日まで対潜掃討に従事したが戦果なし。
1944年（昭和19年）3月15日：諫早分遣隊（初歩訓練）・元山分遣隊（戦闘機慣熟訓練）を設置。
1944年（昭和19年）5月15日：済州島分遣隊（初歩訓練）を設置。
1944年（昭和19年）8月1日：佐世保空大村分遣隊が第三五二海軍航空隊に改編され、大村駐留を継続。
1944年（昭和19年）8月10日：元山分遣隊が二代元山海軍航空隊に改編。
1944年（昭和19年）8月20日：B-29が初空襲。戦闘機隊は大村上空で哨戒。
1944年（昭和19年）10月25日：大村が初空襲を受け、第二十一海軍航空廠が全焼。三五二空の防空邀撃に協力。以後、大村市は18回爆撃を受け、そのたびに三五二空・大村空で邀撃。
1944年（昭和19年）11月11日：B-29偵察機が九州を偵察。5機で追尾するが取り逃がす。
1945年（昭和20年）2月11日：済州島分遣隊が釜山海軍航空隊に改編。
1945年（昭和20年）3月1日：諫早分遣隊が諫早海軍航空隊に改編。
1945年（昭和20年）3月頃：「天号作戦」に備え特攻隊を編成、「神剣隊」を結成。
1945年（昭和20年）3月27日：八幡空襲。邀撃に協力。
1945年（昭和20年）4月1日：沖縄に連合軍が上陸。実施部隊は三五二空とともに笠之原飛行場に進出。
1945年（昭和20年）4月6日：「菊水一号作戦」発動。第一神剣隊16機が出撃。
1945年（昭和20年）4月14日：第二神剣隊9機が出撃。
1945年（昭和20年）4月16日：第三神剣隊3機・第四神剣隊1機が出撃。
1945年（昭和20年）4月21日：笠之原飛行場に敵機が襲来、邀撃。
1945年（昭和20年）4月22日：特攻隊を喜界島上空まで護衛。
1945年（昭和20年）4月27日：笠之原飛行場に敵機が襲来、邀撃。
1945年（昭和20年）5月4日：第五神剣隊15機が出撃。
1945年（昭和20年）5月5日：解隊。大村飛行場は相次ぐ空襲で壊滅的な被害を受けていたため、訓練は不可能な状態だった。

本土決戦に備え、海軍乙航空隊の西海海軍航空隊の隷下に置かれ、伝統ある大村空も解散となりました。笠之原に残留した神剣隊は第七二一海軍航空隊に委譲され、5月14日の第六神剣隊の出撃をもって壊滅しました。

主力機種

水上機・飛行艇を除く各種陸上機・艦上機が運用されました。ただし、横須賀海軍航空隊で訓練した気球隊、霞ヶ浦海軍航空隊で訓練した飛行船隊の配属はありませんでした。

歴代司令

（略）

戦後の大村飛行場

1955年（昭和30年）より海上自衛隊が使用を開始し、大村航空基地が発足しました。同時に民間航空も開設されました。長らく民間と海自が競合していましたが、1975年（昭和50年）に沖合の箕島に新滑走路が開かれ、民間機はすべて新滑走路に移転しました。

元山海軍航空隊

朝鮮半島中部の元山飛行場は、開戦時に活動した陸攻隊の元山海軍航空隊が原隊としていましたが、南方に進出したまま帰還することができず、施設に余裕がありました。そこで、初歩訓練を終えて戦闘機実用訓練に入った訓練生の教育を推進するため、1944年（昭和19年）3月15日に元山分遣隊を設置しました。他の分遣隊より一足早く、同年8月10日に独立し、二代目の元山空となりました。沖縄地上戦に際し、元山空は特攻隊として「七生隊」を派遣し、大村空の神剣隊と統一行動をとっています。元山空の行動については、元山海軍航空隊#二代元山海軍航空隊を参照してください。

諫早海軍航空隊

1944年（昭和19年）3月15日に大村空の分遣隊として、長崎県諫早市小野の逓信省長崎地方航空機乗員養成所を接収して設置されました。1945年（昭和20年）3月1日に独立し、陸上機初歩訓練を継続しました。諫早航空隊に附属して海軍病院が設置されたため、8月9日の長崎市への原子爆弾投下の際には、いち早く被災者の受け入れを実施しています。司令は竹中正雄大佐が独立当日より着任し、解隊まで指揮しました。

釜山海軍航空隊

1944年（昭和19年）5月15日に大村空の分遣隊として、済州島の海軍飛行場に設置されました。1945年（昭和20年）に入ると、海上護衛総司令部隷下の第九〇一海軍航空隊が駐留するため、済州島分遣隊の移設が必要となりました。そこで釜山市近郊の金海飛行場に移転。2月11日に独立し、陸上機初歩訓練を継続しました。司令は林季樹予備役大佐が分遣隊長から横滑りしたのち、5月11日に現役の高橋俊策大佐と交代し、終戦後解隊しました。

脚注

参考文献

『日本海軍編制事典』（芙蓉書房出版　2003年）
『航空隊戦史』（新人物往来社　2001年）
『日本海軍航空史2』（時事通信社　1969年）
『戦史叢書　海軍航空概史』（朝雲新聞社　1976年）
『戦史叢書　沖縄方面海軍作戦』（朝雲新聞社　1968年）
『戦史叢書　本土方面海軍作戦』（朝雲新聞社　1975年）
『連合艦隊海空戦戦闘詳報別巻1』（アテネ書房　1996年）

関連項目

大日本帝国海軍航空隊一覧

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