高岩神社 (能代市)

高岩神社：霊峰高岩山の神秘と歴史

秋田県能代市二ツ井町に位置する高岩神社は、標高333.7mの高岩山中に鎮座します。古来より霊山として崇められてきたこの地は、数多くの奇岩や巨木が織りなす独特の景観を持ち、人々の信仰を集めてきました。本記事では、高岩神社の歴史、遺物、そして周辺に存在した宗教施設について詳しく解説します。

高岩神社の概要

現在の高岩神社は、清水寺を彷彿とさせる「懸造（かけづくり）」または「舞台造（ぶたいづくり）」と呼ばれる建築様式が特徴です。社殿内には、久保田藩主・佐竹義和の筆による「高岩山」と記された額が納められており、1794年に奉納されたと伝えられています。

高岩山の開山は天安年間（857-859年）に円仁によって行われたとされ、享保年間（1716年-1735年）には秋田六郡三十三観音霊場の29番札所として定められました。1815年には、久保田藩士・淀川盛品が『秋田風土記』に高岩神社を詳細に記録し、阿弥陀如来像、薬師如来像、観音菩薩像が円仁の作であると記しています。

現在、高岩神社は主に能代市二ツ井町荷上場地区の人々によって信仰されており、小正月には男若水裸参りという伝統行事が行われています。

高岩山の遺物

高岩山には、歴史を物語る様々な遺物が残されています。

五輪塔：鎌倉時代末期から室町時代初期に作られたと推定される石塔。男鹿半島西海岸の加茂の流紋岩を使用。
大銀杏：樹齢800年以上と推定される銀杏の巨木。地上2mの所から5本に分岐しており、近くには修行者の袈裟を乾かしたとされる袈裟掛石があります。かつてこの地にあった蜜乗寺の庭木と庭石であったと伝えられています。
七廻杉：樹齢550年と推定される大杉。息を止めて7周すると願いが叶うと言われています。
径甕（けいきょう）：昭和9年に御座堂から発掘された須恵器。県指定の有形文化財となっており、道の駅ふたついに展示されています。
古毛里岩（こもりいわ）：高岩神社本堂の裏側にあり、参拝者が暖を取ったとされる場所。
権現岩（ごんげんいわ）：古毛里岩の上に位置し、四つの岩から構成されています。
男御殿岩：金剛界大日如来を祀る、高岩山で最も巨大な岩。
女御殿岩：胎蔵界大日如来を祀り、歩いて山頂まで行くことができます。
四廊岩：4つの巨石が傾いて岩屋のようになっている場所。慈覚大師が異人と出会った場所とされています。
弁天岩：参拝路の途中にある甘池の中にあり、弁天様が祀られています。
亀ノ子岩：大きな岩の表面に亀が抜け出したような穴が開いています。
目洗水：慈覚大師が目を洗ったとされる泉。干ばつ時にも枯れることがありません。
来迎岩（らいげいいわ）：慈覚大師を迎えた三尊が来た場所とされています。
籠目岩：籠の目に似た穴があり、銭を投げ入れて入ると祈願成就の証とされていました。
* 不動岩：所在は不明ですが、高岩山の要岩で、慈覚大師が修行後に埋封秘匿したとも言われています。

菅江真澄の記録

江戸時代の紀行家・菅江真澄は、1802年に高岩山を訪れ、その様子を詳細に記録しました。彼はその著書『しげき山本』の中で、高岩山の景観を「中国の大河を描いた有名な絵画を見るのと等しかった」と絶賛し、麓にあった密乗寺などの寺院についても記述しています。また、高岩山にまつわる物語や、権現岩に納められている獅子頭の由来なども記録しています。

高岩山の物語

高岩山は鎌倉時代末期から行場として機能し、多くの修行僧がこの山で修行を行っていました。戦国時代には、高岩山の密乗寺が僧兵を抱え、地域の支配に影響力を持っていましたが、最終的には戦乱の中で焼き払われました。

また、高岩山には様々な民話が残されています。竜を切ってしまった爺の話や、僧兵が身を投じた稚児岩の話などが語り継がれています。

高岩山のその後

密乗寺の廃寺を憂いた天室蒼龍和尚は、1584年に梅林寺を再興し、宗派を曹洞宗に改めました。その後、高岩山は地域の霊場として修験者の修行の場となりましたが、明治時代の修験道禁止令により衰退しました。

現在では、小正月の男若水裸参りが復活し、多くの人々が参加する行事となっています。また、裸参りに合わせて高岩山万燈夜が行われ、雪灯篭が灯る幻想的な風景が広がります。

高岩神社と高岩山は、豊かな自然と歴史、そして人々の信仰が織りなす、魅力的な場所です。ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。

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