高慢と偏見とゾンビ (映画)
高慢と偏見とゾンビ
2016年にアメリカ合衆国とイギリスの合作で製作された映画。ジェイン・オースティンの古典小説『高慢と偏見』を大胆に翻案した、セス・グレアム＝スミスによる同名小説を原作とする。バー・スティアーズが監督と脚本を務め、リリー・ジェームズがエリザベス・ベネットを、サム・ライリーがダーシー大佐を演じるほか、ジャック・ヒューストン、ベラ・ヒースコート、ダグラス・ブースらが出演している。
作品概要
19世紀初頭のイングランドを舞台にしながら、謎のゾンビが蔓延する世界を描く。名家ベネット家の5姉妹は、淑女としての教養に加え、父の命により中国で培った武術の腕前でゾンビと日夜戦っている。そんな中、資産家ビングリーと友人ダーシーが近所に引っ越してきたことから、ベネット姉妹のロマンスと誇りをかけた人間ドラマがゾンビとの死闘と入り混じり展開していく。製作予算は2,800万ドルに対し、全世界興行収入は1,640万ドルに留まった。日本でのキャッチコピーは「不朽の恋愛小説、感染。」。
あらすじ
ハートフォードシャーに住むベネット家の5姉妹は、淑女教育の傍ら、父の意向で中国で武道を修め、周囲に跋扈するゾンビと戦う日々を送っていた。一方、母は娘たちを裕福な男性と結婚させることしか考えていない。ある舞踏会で、長女ジェーンは資産家ビングリーに見初められる。ビングリーの友人で高慢なダーシーは、次女エリザベスを自分に釣り合わないと評し、彼女を苛立たせるが、舞踏会を襲撃したゾンビと果敢に戦うエリザベスの姿に惹かれ始める。
ジェーンがビングリー邸訪問中にゾンビに遭遇し熱を出した際、ダーシーは彼女の感染を疑い、駆けつけたエリザベスの反感を買う。ベネット家を訪れた、ロングボーンの相続人コリンズ牧師はエリザベスに求婚するが、戦士の道を諦めさせる条件に彼女は拒否。士官ウィカムと出会ったエリザベスは、荒廃したロンドン「インビトウィン」へ案内され、豚の脳でゾンビ化を抑制する感染者たちの存在を知る。
ジェーンとビングリーがダーシーの介入で引き裂かれたことを知ったエリザベスは、コリンズと結婚したシャーロットの元でダーシーから求婚されるが、彼の過去の行動への怒りから激しく拒絶する。後にダーシーから事情を聞き、ウィカムの裏切りを知ったエリザベス。その直後、末娘リディアがウィカムとインビトウィンへ駆け落ちしたとの知らせが入る。リディア救出に向かったダーシーとエリザベスは、ウィカムがゾンビを率いて英国支配を企んでいることを知る。激しい戦闘の末、橋を爆破して脱出を図るも、ダーシーは負傷し意識を失う。涙ながらに彼への想いを告白するエリザベス。
回復したダーシーとビングリーは、それぞれエリザベスとジェーンに改めて求婚。二組はコリンズ牧師の前で結婚式を挙げる。しかし、クレジットシーンでは、ウィカム率いるゾンビ軍団が会場に迫る様子が描かれ、物語に含みを持たせる。
原作小説との主な相違点
本作はセス・グレアム＝スミスによる原作小説を基にしているが、いくつかの変更点がある。例えば、ベネット姉妹の母方の親戚やダーシーの従兄弟など、一部のキャラクターが登場しない。ダーシーの妹ジョージアナの出番も少ない。ロンドンが「インビトウィン」としてゾンビが跋扈する荒廃した場所として描かれるのは映画独自の設定である。また、シャーロット・ルーカスがゾンビ感染する筋書きや、リディアとウィカムが最終的に正式に結婚する設定もカットされている。ウィカムがダーシーへの復讐心からゾンビ化を抑え、結婚式を襲撃するという展開も映画オリジナルの要素である。
製作背景
映画化の企画は2009年から進行したが、監督やキャストの選定は難航した。当初ナタリー・ポートマンが主演・製作を務め、デヴィッド・O・ラッセルが監督予定だったが、相次いで降板。その後もマイク・ホワイト、クレイグ・ギレスピーなどが監督候補に挙がったが実現せず、プロジェクトは一時停滞。2013年にバー・スティアーズが監督に就任し、脚本を書き直した。主要キャストは2014年に入ってから順次決定。撮影は2014年9月に開始され、ウェスト・ウィカム・ハウスやハットフィールド・ハウスなどがロケ地として使用された。
作品評価
批評家からの評価は賛否が分かれた。批評集積サイトRotten Tomatoesでは支持率43%、Metacriticではスコア45/100となっている。肯定的な評価としては、古典とゾンビの異色な組み合わせや、一部のコミカルな描写を楽しむ声があった。特にコリンズ牧師のくだりは評価する向きもあった。一方で、「繰り返されるジョーク」「ストーリーが整理されていない」「古典とホラーの融合が上手くいっていない」「噛みつき（パンチ）が足りない」といった否定的な意見も多く見られた。興行収入は期待を下回り、商業的には成功しなかったと言える。
主な登場人物・キャスト
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