ハットフィールド・ハウス

ハットフィールド・ハウス：歴史と建築が織りなす壮麗な邸宅

ハットフィールド・ハウスは、イングランドのハートフォードシャーに位置する、中世の歴史を今に伝えるカントリー・ハウスです。その起源は15世紀末にまで遡り、当初は高位聖職者の邸宅として建設されました。時を経て、王室の宮殿としての役割も担い、さらに17世紀初頭には、名門セシル家の邸宅としてその歴史を刻み始めました。現在の主館は、初代ソールズベリー伯爵ロバート・セシルによって1607年から1612年にかけて改築されたもので、ジャコビアン様式の建築を代表する傑作として知られています。

歴史

15世紀末、イーリー大聖堂の枢機卿ジョン・モートンによって建てられたハットフィールド・ハウスは、その後の宗教改革の波にのまれ、ヘンリー8世によって没収されました。その後、王の子供たちの宮殿として使用され、メアリー1世やエリザベス1世といった歴史上の人物が幼少期を過ごした場所として知られています。17世紀初頭、ジェームズ1世の時代に、宰相であった初代ソールズベリー伯爵ロバート・セシルが国王との間で邸宅交換を行い、ハットフィールド・ハウスはセシル家の所有となりました。以降、セシル家はソールズベリー侯爵の称号を得て、この館は彼らの本邸として今日に至っています。

19世紀末から20世紀初頭にかけては、第3代ソールズベリー侯爵ロバート・ガスコイン＝セシルをはじめとする、英国政界の大物政治家を多数輩出し、政界サロンとしても機能しました。1903年には、日英同盟締結に向けて訪英した伊藤博文もこの館に招かれたという記録が残っています。

現在、ハットフィールド・ハウスは第7代ソールズベリー侯爵ロバート・ガスコイン＝セシルによって所有されていますが、一般公開されており、多くの人々がその歴史と美しさに触れることができます。

構成

ハットフィールド・ハウスは、主館、ビショップ館、そして広大なハットフィールド公園から構成されています。

主館
1607年から1612年にかけて、初代ソールズベリー伯爵ロバート・セシルによって建てられたこの主館は、ジャコビアン様式の代表的な建築物です。フランスの邸宅建築のようなコの字型平面を持ち、中央にはスクリーンズ・パッセイジ、右手にマーブルホールが配置されています。1835年の火災により西翼が焼失しましたが、その後復元されています。
ビショップ館
もともとイーリー大聖堂の聖職者たちの邸宅であったビショップ館は、1480年にモートン卿によって赤レンガ造りの館として建てられました。1515年頃からヘンリー8世が別邸として使用し、メアリー王女、エリザベス王女、エドワード王子（後のエドワード6世）が幼少期を過ごしました。エリザベスの死後、ジェームズ1世の妃アン・オブ・デンマークの所有となりましたが、1607年にセシル家のものとなり、主館の改築に伴い取り壊されました。現在では、15世紀の遺構である厩と門楼が保存され、レストランなどとして利用されています。
ハットフィールド公園
7500平方メートルの広さを誇るハットフィールド公園は、17世紀初頭に造園され、19世紀半ばと20世紀後半に整備されました。ヘンリー・ムーアなどの野外彫刻が多数配置されており、訪れる人々を魅了しています。

ロケ地としてのハットフィールド・ハウス

ハットフィールド・ハウスは、その美しい外観と歴史的な背景から、多くの映画やテレビドラマのロケ地としても利用されています。主な作品としては、以下のものがあります。

アガサ・クリスティー ミス・マープル (TVシリーズ) - 「チムニーズ館の秘密」
英国王のスピーチ
シャーロック・ホームズ (2009年の映画)
バットマン
バットマン ビギンズ
恋におちたシェイクスピア
高慢と偏見とゾンビ

これらの作品を通して、ハットフィールド・ハウスの壮麗な姿を垣間見ることができます。

ギャラリー

外観
マーブル・ホール
ステアケース
ライブラリー
ロングギャラリー
チャペル
武器庫
その他の部屋
美術品
庭園

外部リンク

公式ウェブサイト
全景

参考文献

田中亮三『図説 英国貴族の暮らし』河出書房新社、2009年。ISBN 978-4309761268。
杉恵惇宏『英国カントリー・ハウス物語―華麗なイギリス貴族の館』彩流社、1998年。ISBN 978-4882025627。
* 増田彰久『英国貴族の城館』河出書房新社、2019年。ISBN 978-4309278964。

ハットフィールド・ハウスは、その歴史、建築、そして美しい庭園を通して、訪れる人々に豊かな体験を提供しています。

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