高木壬太郎

高木 壬太郎（たかぎ みずたろう）は、元治元年（1864年）に遠江国榛原郡（現在の静岡県川根本町）に生まれ、大正10年（1921年）にその生涯を閉じた、明治・大正期における日本の代表的なキリスト教徒、特にメソジスト派の牧師であり教育者でした。後の「静岡バンド」の一員としても知られ、教育機関の発展に尽力、青山学院の第4代院長も務めました。

幼少期、壬太郎は生まれ故郷で漢学を修め、村の儒学者である川村半山に師事しました。10歳で長尾学校に入学し、その後、掛川で蘭学を岡田清直から学びます。明治11年（1878年）には静岡師範学校に進み、ここで生涯の友となる山路愛山と出会いました。同校では、後に新設された高等師範学科へ移り、愛山と共に文学雑誌『呉山一峰』を創刊するなど、文学への関心も示しています。

師範学校を卒業後、壬太郎は教育者の道を歩み始め、御殿場村立中郷学校の校長を務めます。その後、静岡県内の高等小学校の校長も経験しますが、約24歳で教職を辞しました。その転機となったのは、キリスト教宣教師F.A.カシディとの出会いです。カシディの説教に感銘を受け、キリスト教への求道を始め、明治18年（1885年）夏には静岡教会の教会員となりました。同年10月には大石梨花と結婚。翌明治19年（1886年）10月31日、カナダ・メソジスト教会の平岩愃保牧師から、盟友の山路愛山と共に洗礼を受けます。この静岡教会からは、壬太郎や愛山のほか、今井信郎なども輩出されています。

明治22年（1889年）、妻子を残して上京した壬太郎は、平岩愃保らが設立した東洋英和学校の神学部に入学し、本格的な神学の学びを深めます。明治25年（1892年）には同校神学課程を修了する前に麻布教会の牧師に就任し、その後按手礼を受け、日本メソジスト教会の正教師となりました。麻布教会での牧師経験の後、さらなる研鑽のため、明治28年（1895年）にカナダのヴィクトリア大学神学部に留学。3年後に卒業し帰国しました。

帰国後、壬太郎は東洋英和学校神学部の教授に就任し、同時に築地教会や中央会堂、駒込教会などで牧師を務めました。また、メソジスト教会の機関誌『護教』の主筆としても、教理の普及や啓蒙活動に貢献しました。明治39年（1906年）、ヴィクトリア大学より日本人として初めて名誉神学博士号を授与され、その学識が高く評価されます。

明治40年（1907年）からは青山学院の専任教授として新約神学を講じました。大正2年（1913年）、小方仙之助の後を受けて青山学院の第4代院長に就任。学院の発展に尽力し、特に大正9年（1920年）には青山学院大学の設置計画を発表、その実現に向けて情熱を注ぎました。この間、日本のキリスト教界が直面した三教合同問題においては、内村鑑三らと共にこれに反対する姿勢を示しました。また、神学者・教育者としての集大成ともいえる大著『基督教大辞典』を大正元年（1911年）に刊行し、日本のキリスト教学研究に大きな貢献を果たしました。大正10年（1921年）、大学設置計画の実現を見ぬまま病のため召天しました。

主要な著作として以下が挙げられます。

『ジョン・ウェスレー伝』
『基督教的品性』
『宗教小観』
『基督教安心論』
『基督教大辞典』
『生活と宗教』
『新約全書解題』
『詩篇講義』

彼はまた、ハーナックの『基督教とは何ぞや』を翻訳するなど、海外の神学思想の紹介にも努めました。

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