高木益太郎

高木益太郎

高木益太郎（たかぎ ますたろう、1869年3月7日 - 1929年12月11日）は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本の実業家、政治家、弁護士であり、資産家としても知られています。衆議院議員を6期務めたほか、法律新聞の社長、尾西鉄道の社長、法政大学の総務部長、理事など、多岐にわたる分野で活躍しました。位階は従五位、勲三等を受勲しています。

生涯

1869年1月25日、東京に生まれた高木益太郎は、幼少期に質店で丁稚奉公を経験しました。その後、知人が法律の知識不足から高利貸しに苦しめられたことに憤慨し、「弱者の味方となり、正義公正な権利擁護に尽くそう」と決意し、法律の道を志します。銀行に勤務しながら東京法学校（現・法政大学）に通い、1887年に卒業。19歳という若さで代言人試験に合格しますが、すぐに開業せず、帝国大学で学びながら、路傍で法律演説を行い、法律思想の普及に尽力しました。その後、代言人事務所を開設し、1900年には『法律新聞』を創刊します。

1908年には、第10回衆議院議員総選挙で当選。立憲国民党、立憲民政党に所属し、政治家としても活動しました。また、尾西鉄道社長、遠州電気、木曽川物産の各取締役、東華生命保険の監査役など、多くの企業の要職も務めました。1913年には、全国盲人大会にも出席しています。

1929年9月、蜂窩織炎を患い慶應義塾大学病院に入院。手術後の経過は良好でしたが、心身の疲労が著しく、12月11日に脳塞栓を起こして死去しました。享年61歳。墓所は多磨霊園にあります。

人物

弁護士として

高木益太郎は、特に刑事事件に強い関心を持ち、冤罪に苦しむ被告の弁護に尽力しました。当時の東京弁護士会では、刑事弁護の大家として知られる花井卓蔵と並び称されるほどの著名な刑事弁護士でした。また、浅草寺が所有する広大な土地が、維新の際に国に没収されたとして、国を相手取って訴訟を起こし、浅草寺の所有権を取り戻すという大きな功績も残しています。

法律新聞

高木益太郎が創刊した『法律新聞』は、下級審の裁判例を広く掲載し、法律の普及と立法の資料として役立てることを目的としていました。大審院判決についても、「判決録」や「判例集」に掲載されないものまで全文を掲載するなど、当時の法曹界の動向や外国の立法状況を伝える貴重な資料として、明治・大正期の法曹界に大きな影響を与えました。高木没後は、娘婿である弁護士の岡崎源一が後を継ぎましたが、1944年に終刊となりました。

人柄

高木益太郎は、『日本弁護士総覧』で「侠気に富み、気骨稜々である」と評されており、『大正人名辞典』では「江戸っ子中の任侠児」と評されるなど、その人柄は豪快で義理堅いものであったようです。住所は東京市日本橋区や芝区にありました。

家族・親族

高木家は、父・益喜が尾張の津島から出て成功した金貸座頭であり、母・キクは鈴木新吉の三女です。妻は岡崎正也の妹・こふで、息子は菊太郎、菊松、その他に3人の息子と3人の娘がいます。娘婿には弁護士の岡崎源一がいます。親族には、妻の兄である岡崎正也、三女の夫の父である佐久間定吉、詩人の野口米次郎などがいます。

高木益太郎は、多岐にわたる分野で活躍し、その義理堅い人柄から多くの人々に慕われた人物でした。特に、弁護士としては弱者の権利擁護に尽力し、その功績は今もなお語り継がれています。

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