東京法学校

東京法学校の設立と発展

東京法学校は、1881年（明治14年）に東京法学社を母体として設立された私立の法律学校です。現在の法政大学の前身であり、日本の近代法学教育において重要な役割を果たしました。本稿では、東京法学校の設立から、東京仏学校との合併、そして法政大学への発展までを詳細に解説します。

設立の背景と初期の活動

東京法学校の設立には、司法省関係者の支援が大きく関わっていました。当時、日本の法学教育はフランス法が主流であり、東京法学校もその流れを汲んで設立されました。創立者には、金丸鉄、伊藤修、薩埵正邦、堀田正忠、元田直といった法律家や司法省関係者が名を連ねています。

東京法学校の前身である東京法学社は、講法局と代言局の二つの部門で構成されていました。講法局では法律の講義を行い、代言局では弁護士業務の実務体験を提供していました。これは現代の法科大学院の原型とも言えます。しかし、代言人規則の改正により、代言局での実務教育は継続できなくなり、講義中心の学校へと移行しました。

東京法学校は、設立当初から明治法律学校（現在の明治大学）と対抗関係にありました。明治法律学校が自由民権運動の拠点であったのに対し、東京法学校は官学色が強く、政府関係者の支援を受けていました。授業料の値下げ競争も激化しましたが、両校は後に和解し、競争は終結しました。

東京仏学校との合併と和仏法律学校の設立

1886年（明治19年）には、フランス学の普及を目的とした東京仏学校が設立されました。東京仏学校は、司法省法学校の後身的な性格を持ち、フランス語で法律を教えていました。設立には、辻新次、古市公威、長田銈太郎、山崎直胤、平山成信、寺内正毅、栗塚省吾といった当時の有力者が関与していました。

しかし、帝国大学（現在の東京大学）ではイギリス法が主流となり、ドイツ法も台頭してきたため、フランス法系の学校は危機感を抱くようになりました。その結果、1889年（明治22年）に東京法学校と東京仏学校が合併し、和仏法律学校が設立されました。

和仏法律学校は、法典論争において法典実施断行派の拠点となりました。これは、民法・商法の施行を巡り、帝国大学の英法系や他の法律学校と対立したものです。

法政大学への改称と発展

1898年（明治31年）に財団法人化され、理事・監事制度が導入されました。翌年には研究誌『法学志林』が創刊され、教育・研究機関としての整備が進みました。そして、1903年（明治36年）に学校名を「法政大学」と改称し、初代総理（現在の総長）には梅謙次郎が就任しました。ただし、この時点では専門学校令に準拠する旧制専門学校であり、大学令による大学となったのは1920年（大正9年）のことです。

通信教育機関「中央法学会」

1885年（明治18年）には、通信教育機関「中央法学会」を設立し、『中央法学会雑誌』を創刊しました。地方に住む人々にも法律学を学べる機会を提供しようとしたものです。このシステムは、毎月3回講義内容を掲載した雑誌を送り、質問には書面で回答し、年度末の試験に合格すれば及第書を発行、全課程修了者には卒業証を授与するというものでした。また、在京者向けのスクーリングも実施していました。この中央法学会の活動は、後の大学通信教育課程へと発展しました。

校地の変遷

東京法学校は、設立当初は神田駿河台にありましたが、後に神田錦町、小川町へと移転しました。小川町の校舎は、旧勧工場の建物を改築したもので、当時としては非常に規模の大きいものでした。また、東京仏学校は、東京法学校の向かいの建物に開校しましたが、後に柳原河岸へ一時的に移転しました。

和仏法律学校の発足後、1890年（明治23年）には九段上の新校舎に移転しました。この校舎は、山口半六が設計したもので、「梧桐の校舎」として親しまれていました。その後、大正期には手狭になったため、1921年（大正10年）に現在の市ヶ谷キャンパスへと移転しました。

東京法学校は、日本の法学教育の発展に大きな貢献を果たした重要な学校です。その歴史は、法政大学へと受け継がれ、現在も多くの学生が学んでいます。

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