高木綾子

愛知県豊田市に生まれた高木綾子は、現代日本を代表するフルート奏者の一人です。幼少期にピアノを始め、8歳からフルートに転向。その才能は早くから開花し、東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京芸術大学、同大学院へと進み、専門的な研鑽を積みました。フルートを西村智江、橋本量至、ジェラール・ノアック、小坂哲也、山崎成美、金昌国、パウル・マイゼンといった名だたる師に、室内楽を岡崎耕治に師事し、その基礎と表現力を培いました。

大学在学中より、高木はその卓越した技術と豊かな音楽性で注目を集め、数々の主要な音楽コンクールで輝かしい成績を収めました。1995年には毎日新聞社主催全日本学生音楽コンクール東京大会で第1位を獲得。その後も、日本管打楽器コンクール、日本音楽コンクール、日本フルートコンベンションコンクール、宝塚ベガコンクールなどで次々と最高位に輝き、若手演奏家としての地位を不動のものとしました。国際舞台でも、ジャン＝ピエール・ランパル国際フルートコンクールや神戸国際フルートコンクールといった権威あるコンクールで入賞を果たし、国内外からその実力を高く評価されました。

こうしたコンクールでの成功を背景に、高木は精力的な演奏活動を展開し始めました。国内ではNHK交響楽団をはじめとする主要オーケストラと数多く共演。その活動は国内にとどまらず、ベルリン・ユーバル・カルテット、チェコフィルハーモニー八重奏団、フランツ・リスト室内管弦楽団、サンクトペテルブルク交響楽団といった海外の著名なアンサンブルやオーケストラとも共演を重ねました。特に、2004年秋にはパリ室内管弦楽団との共演でパリでの鮮烈なデビューを飾り、続く日本ツアーでも高い評価を得ました。また、トヨタ・クラシックスのアジアツアーにソリストとして帯同したり、韓国KBS交響楽団と共演するなど、国際的な舞台での活躍も目覚ましいものがあります。2009年には「天皇・皇后両陛下ご成婚50周年ご即位20周年記念コンサート」においてNHK交響楽団とフルート協奏曲を共演するという栄誉にも浴しました。リサイタルや室内楽コンサートにも積極的に出演し、その活動の幅広さを示しています。

録音活動も高木のキャリアにおいて重要な位置を占めています。2000年にCDデビューを果たして以来、これまでに12枚を超えるアルバムをリリース。クラシックのフルート作品はもちろん、映画音楽、ポップスのカバー、オリジナル曲など、ジャンルにとらわれない幅広いレパートリーを展開しており、それらの録音はいずれも高い評価と実績を誇っています。また、テレビやラジオ番組への出演、CMへの起用など、従来のクラシック演奏家の枠を超えたメディア露出も多く、その存在は音楽界のみならず広く認知されています。

演奏家としての活動に加え、高木は後進の指導にも情熱を注いでいます。現在、東京芸術大学准教授、洗足学園音楽大学客員教授を務めるほか、尚美ミュージックカレッジ専門学校、武蔵野音楽大学、日本大学芸術学部で非常勤講師として教鞭をとっており、次世代のフルート奏者の育成に貢献しています。

常に音楽的な探求を怠らず、イサン・ユンの難曲であるエチュード全曲演奏に挑むなど、挑戦的な姿勢も高木の特徴の一つです。その真摯な音楽への取り組みは、多くの評論家や聴衆から称賛を集めています。私生活ではトロンボーン奏者である松永英也と結婚し、三人の子の母でもあります。多忙な演奏活動と教育活動を両立させながら、現代日本フルート界の第一線で活躍し続ける、影響力のある音楽家です。

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