高橋琢也

高橋琢也

高橋琢也（たかはし たくや）は、1848年1月22日に生まれ、1935年1月20日に没した、明治から昭和初期にかけての官僚、政治家です。貴族院議員、沖縄県知事（第6代）、そして東京医科大学の創立者として、その名を歴史に刻んでいます。広島県平民として生まれ、激動の時代を生き抜きました。

生涯

安芸国牛田村（現在の広島市東区牛田）で、高橋久次の長男として生を受けた高橋琢也は、幼くして両親を亡くし、祖母の手で育てられました。御典医を目指し藩医の弟子になったり、大阪で薬屋に奉公するなど、苦労を重ねながら洋学を修めました。1870年からは大学南校（現在の東京大学）に勤務し、その後教授に就任。また、陸軍兵学寮や参謀本部にも籍を置き、主に兵事関係の外国文献の翻訳に携わりました。

1885年、高橋は農商務省に転じ、東京農林学校教授や林務官を経て、1895年には山林局長に就任。森林法の制定に尽力しました。しかし、農商務大臣が榎本武揚から大隈重信に代わると、大隈と意見が合わず、1897年に官職を辞することになります。

その後、北炭、三井物産、北海道庁の顧問を経て、第一次山本内閣の内務大臣であった原敬に見出され、1913年に沖縄県知事に抜擢されました。当時67歳という高齢での就任は、中央紙から酷評されましたが、高橋は持ち前の精力と個性で県政を牽引しました。県内各地を巡回し、県民の啓発に努め、県振興策を政府に訴えるなど、沖縄の発展に大きく貢献しました。1914年、第二次大隈内閣が成立すると、大隈に辞表を提出し休職しました。

1918年、長年官界にあった高橋は、全財産を投じて東京医学専門学校（現在の東京医科大学）を設立しました。医学界、政界、財界の有志からの多大な支援を得て、佐藤進、森鷗外、原敬、犬養毅、高橋是清、大隈重信、渋沢栄一らが設立に協力しました。

1919年1月27日、原内閣で貴族院議員に勅選され、亡くなるまでその職を務めました。1923年には、立川太郎や娘婿の竹下文隆らと共に産業組合の有限責任信用組合共同金庫を設立しましたが、1928年に東京府知事の命令により解散しました。

1935年1月20日、86歳で生涯を閉じました。東京医学専門学校では盛大な校葬が営まれました。

人物像

広島で奉公していた頃、主人から「山より大きな獅子はいない」という言葉を受け、自身の成長を期して大阪へ出ることを決意したという逸話が残されています。東京医科大学では、その設立と運営に尽力した高橋を「学祖」としています。

家族

高橋家は広島県安芸郡牛田村（現在の広島市東区牛田）と、東京牛込余丁町（現在の東京都新宿区）に居を構えていました。父は久次。妻タミは法学博士戸田海市の未亡人で、その他、秀、マリ、牛太郎、律人、鶴巻、静人、初枝、登喜、カナエ、北子、三七郎という多くの子どもたちがいました。特に、カナエは竹下文隆に嫁いでいます。

著書

高橋琢也は、『起て沖縄男子』（1915年）や『沖縄産業十年計画評』（1916年）などの著書を遺しています。

脚注

参考文献

『貴族院要覧（丙）』昭和21年12月増訂、貴族院事務局、1947年。
『新日本人物大観』（広島県版） 人事調査通信社、1959年
『日本の歴代知事』第三巻（下） 歴代知事編纂会、1982年
『沖縄大百科事典』（中） 沖縄タイムス社、1983年
* 衆議院・参議院編『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年。

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