高瀬堰

高瀬堰の概要

高瀬堰（たかせぜき）は、広島県広島市安佐北区と安佐南区に位置し、国土交通省中国地方整備局によって管理されている特定多目的ダムです。このダムは、太田川に沿った一級水系の河川施設であり、河口から約13.6㎞の地点に建設されています。その役割は、洪水の調整や広島市をはじめとする地域への水供給を行うことです。

高瀬堰の歴史

高瀬堰が設立される前の時代には、高瀬井堰という固定堰が存在し、江戸時代から続く歴史があります。この堰は、西国屈指の大藩であった広島藩の影響を受けて設計され、安田郡の丸子市郎兵衛が新田を開発するために太田川から用水路を建設する計画を立てました。この計画は、今村市兵衛に引き継がれ、実際に1648年から工事が始まりました。1667年には、高瀬井堰が完成し、周辺の農地に大きな恩恵をもたらしました。

その後、固定堰では洪水流下能力が不足しており、水害が発生する原因となりました。明治時代から進められていた水道事業に加えて、急激な人口増加により新しい水源の確保が求められ、その結果、高瀬井堰の改良が必要となりました。1970年より始まった「太田川総合開発事業」により、固定堰から可動堰への改良が計画され、1971年に着工、1975年に完成しました。

高瀬堰の機能

高瀬堰の構造は、高さ5.5mで6つのゲートを持ち、水量を調整することで洪水コントロールを行います。これにより、1972年の豪雨時における洪水量を基準とした洪水調節機能が確保されています。また、江の川土師ダムから導水された水が、広島市に水供給されるための貯水池としても機能します。

高瀬堰の完成以降、実際に大規模な洪水が発生しても、顕著な浸水被害は見られませんでした。特に、堰と太田川放水路や温井ダムの連携により、洪水時の浸水被害が効果的に回避されました。

環境への影響

高瀬堰が完成することで、地域の環境に多少の影響が生じました。特に、太田川は天然のアユが遡上する水系でしたが、堰の影響でその数が減ってしまいました。アユの生息数減少は、高瀬堰の設立だけでなく、様々な要因が絡んでおり、アユの生育に不適な水温や環境の変化が寄与しています。これを逆手に取って、太田川漁業協同組合はアユの遡上を促進するため、養殖アユの放流を行い、さらには自然産卵に向けた取り組みを行うなど、自然環境の回復に向けた努力を続けています。

アクセスと地域の活用

高瀬堰は、広島市の水がめとして重要な役割を担っており、地域住民にとっても憩いの場となっています。最寄りのJR可部線・梅林駅やJR芸備線・玖村駅から徒歩でのアクセスが可能です。また、堰を通過する管理用道路は「高瀬大橋」として知られ、地域の交通の要所ともなっています。高瀬堰によってできた貯水池はカヌーのトレーニングなどにも活用され、地域の交流の場ともなっています。

このように、高瀬堰は広島県の水資源を支える重要なインフラであり、治水と利水の両面で大きな役割を果たしています。引き続き、自然環境への影響を最小限に抑えつつ、地域の水供給と洪水対策に貢献し続けることが求められています。

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