高田円乗

高田円乗は、生年不詳ながら文化6年（1809年）に没した、江戸時代中期から後期にかけて活躍した狩野派の絵師です。彼の名は、門弟である菊池容斎が著した『前賢故実』を通じて、後世に広く知られるようになりました。

円乗の画歴を辿ると、加藤文麗に師事したことがわかっています。また、一説には狩野養川院惟信の門人であり、狩野姓を名乗っていたとも伝えられています。彼は江戸の人であり、高田氏を名乗っていましたが、時に高氏と略すこともありました。円乗は号であり、諱は正和、俗称を庸助と称しました。

円乗は、御徒町摩利支天横町に住んでいたことが記録に残っています。『江戸方角分』には「御徒隠居」と記されており、このことから、江戸幕府の御徒士衆であったと推測されています。彼は絵師として非常に優れた筆力を持ち、天明年間から没年に至るまで、数多くの画巻や絵本を手がけました。

また、円乗は同じ御徒士仲間であった大田南畝や朋誠堂喜三二といった文人たちと交流があったことが知られています。さらに、麟祥院には彼の作品が複数残されているほか、師である文麗や弟子の容斎の作品も伝来していることから、この画系との深い繋がりがあったと考えられています。円乗は晩年になると剃髪し、隠居生活を送りました。

円乗の主な著作としては、寛政元年（1789年）に刊行された『孔子行状図解』、寛政3年（1791年）序の『唐詩選画本』3編があります。この他にも多くの肉筆画を残しており、彼の多岐にわたる画業を垣間見ることができます。





参考文献：

日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』第2巻 大修館書店、1982年、p.112
花園大学歴史博物館編集・発行 『花園大学歴史博物館二〇一六年度春季企画展 湯島麟祥院 春日局と峨山慈棹』 2016年4月2日

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