高石かつ枝

高石かつ枝（たかいし かつえ）は、1946年生まれの昭和期の歌手で、本名は伊藤宏子です。彼女は1960年代を代表する青春歌謡歌手の一人として知られ、1962年から1968年まで活動しました。

概要

高石かつ枝の音楽活動は、所属したレコード会社によって特徴が見られます。コロムビア時代には、戦前の歌謡曲のカバーや抒情的な作品が多く、クラウン時代には青春歌謡、テイチク移籍後は大人向けの路線へと変化しました。彼女のレパートリーは非常に多岐にわたり、民謡、演歌、コミカルソング、タンゴ調の曲、青春歌謡、抒情歌など、幅広いジャンルを歌いこなしました。特に、全国各地の地名をモチーフにした「ご当地ソング」が多かったことが特徴です。

彼女は、同時期に活躍した本間千代子と比較されることがありましたが、本間がアイドル路線を確立し若い男性ファンが多かったのに対し、高石は戦前歌謡を好む年齢層をターゲットにしていました。2010年には、本間千代子、高田美和との合同カップリングCDが発売され、再び注目を集めました。

来歴

神奈川県横須賀市出身の高石は、幼少の頃から童謡歌手として活動していました。1960年からは万城目正歌謡音楽院で本格的に歌謡曲を学び、その万城目正は、彼女のデビュー曲「旅の夜風」の作曲者です。小学校5年生の時には、ファッションモデルとして活動し、この時の合格者の中には、後に女優となる和泉雅子もいました。

1962年、松竹映画「愛染かつら」の再映画化に際し、ヒロインの名前を冠した歌手「高石かつ枝」としてデビューし、同映画の主題歌「旅の夜風」を歌いました。その後、藤原良とのデュエット曲もリリースしています。1963年には、東宝映画「林檎の花咲く町」に出演し、同名の主題歌もヒットしました。この年のNHK紅白歌合戦には、セーラー服姿で初出場を果たし、話題を呼びました。しかし、コロムビア在籍時には、佐藤春夫の詩による「湖畔の乙女」のレコード化企画が、クラウンへの移籍問題により中断され、結局、この曲は本間千代子によってリリースされました。

1964年、高石は北島三郎らと共に日本クラウンへ移籍し、1年余りの間に16枚のシングルをリリースしました。しかし、1965年に吹原産業事件に関連して、吹原社長から贈与を受けていたことが発覚し、クラウンとの契約を破棄され、芸能活動を一時自粛しました。その後、テイチクに移籍し、1968年まで活動を続け、この時期には10数枚のシングルをリリースしました。1968年には、住宅設備機器メーカーの御曹司である伊藤祐吉と結婚し、芸能界を引退しました。伊藤はプロ野球選手の王貞治の同級生で、王の仲介が縁で結婚に至ったとされています。

長いブランクを経て、1980年代には「女絵」や中国残留孤児を歌った「風の子守唄」をリリースし、活動を再開しました。また、テレビ番組にもゲスト出演し、懐メロ番組では「旅の夜風」を霧島昇とデュエットしました。

その後

彼女が準主演した映画「林檎の花咲く町」は、DVD化されていませんが、CS放送で放映されています。2010年には、コロムビアから「青春スター　〜ときめきのヒロイン〜 本間千代子・高石かつ枝・高田美和」というCD-BOXが発売され、高石かつ枝のコロムビア時代の作品40曲が収録されました。このCDには、未発表曲7曲も含まれており、貴重な作品集となっています。

主な作品

高石かつ枝は、数多くのシングルやアルバムをリリースしています。代表的なシングルには、「旅の夜風」、「林檎の花咲く町」、「花の決死隊」などがあり、アルバムには「旅の夜風」、「高石かつ枝愛唱集」などが挙げられます。また、数多くの映画やテレビドラマにも出演しており、その多彩な才能を発揮しています。

NHK紅白歌合戦出場歴

彼女は、1963年の第14回NHK紅白歌合戦に初出場を果たしました。この時、舟木一夫も初出場しており、二人の若きスターの共演は大きな話題となりました。

脚注

高石かつ枝の長女である綾子は、Aayahという芸名でジャズシンガーとして活動しており、結婚式や企業イベントなどで活躍しています。また、次女の愛子と共に2012年にはデュエット曲もリリースしています。

関連文献

彼女の活躍に関する記事は、当時の雑誌や書籍に掲載されています。例えば、『月刊明星』、『近代映画』、『週刊平凡』、『週刊女性』などの雑誌には、彼女に関する特集記事やインタビューが掲載されています。

外部リンク

高石かつ枝に関する情報は、キネマ旬報の映画データベースなど、様々なウェブサイトでも確認することができます。

高石かつ枝は、昭和の歌謡界を彩った重要な人物の一人であり、その歌声と活躍は、多くの人々の記憶に残っています。

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