高野容輔

高野容輔：JRA元騎手から調教助手へ―平地と障害の舞台を駆け抜けた軌跡―

高野容輔氏は、1983年生まれのJRA栗東トレーニングセンター所属の元騎手であり、現在は調教助手として活躍しています。競馬とは無縁の家庭環境で育ちましたが、1997年、シルクジャスティスの有馬記念制覇をテレビで観戦したことがきっかけで騎手を目指すことを決意。両親の反対を押し切り、競馬学校に入学しました。

2002年3月、騎手免許を取得。福永甲厩舎所属としてデビューを果たし、同期には五十嵐雄祐氏や黒岩悠氏らがいました。デビュー当初から平地競走と障害競走の両方に騎乗し、才能を開花させます。デビュー3年目までに40勝を挙げ、順調な滑り出しを見せました。2004年には騎乗機会が400回を超えるなど、活躍の幅を広げましたが、2005年以降は減量騎手の特典がなくなったことや、自身の体重管理の難しさから騎乗数、勝利数が減少しました。

騎手生活の中でも大きな転機となったのが2008年のマーメイドステークス制覇です。川島信二騎手が斤量制限のため騎乗できない事態を受け、高野氏が自ら代役を買って出ました。5年ぶりの平地重賞への騎乗、そして見事な勝利は、高野氏にとって大きな自信となったことでしょう。しかし、この勝利が、高野氏の平地・障害競走における唯一の重賞制覇となりました。

2009年には、当時JRA歴代最高額となる複勝配当12280円を記録したレースで3着に入線するなど、実力は折り紙付きでした。そして2010年、中山グランドジャンプでメルシーモンサンに騎乗し、念願のJ・GI、障害重賞初制覇を成し遂げました。この年は高野氏にとって、重賞勝利で幕を開けた年となりました。しかし、この年を最後に高野氏は騎手を引退することを決意します。

引退の背景には、翌年度からの厩舎制度変更、長年の落馬による古傷、そしてレース中に意識が飛ぶという症状などが影響しました。また、2007年に結婚し、2人の子供にも恵まれていたことから、今後の生活と家庭を考えた結果、引退を決断したのです。

2010年12月31日、騎手を引退。吉岡八郎厩舎所属の調教助手として第二の人生を歩み始めます。その後、吉岡氏の定年退職に伴い日吉正和厩舎、大久保龍志厩舎と移籍を繰り返し、2017年から角田晃一厩舎に所属。2019年には、アメリカクラシック三冠に参戦したマスターフェンサーの遠征に帯同するなど、幅広い経験を積んでいます。

高野氏の騎手としての生涯成績は1456戦50勝、重賞勝利は平地と障害でそれぞれ1勝ずつ、合計2勝という結果でした。しかし、その道のりは決して平坦なものではありませんでした。減量騎手の特典がなくなったことによる騎乗機会の減少、落馬による怪我、そして健康上の問題。それらを乗り越え、重賞を制覇した経験、そして調教助手としてのキャリアは、今後の活躍にも繋がる大きな財産となるでしょう。

高野氏の人間性を知る上で欠かせないのが、マーメイドステークスと中山グランドジャンプでのエピソードです。マーメイドステークスでは、48kgという軽量級での騎乗を可能にするため、自ら3.8kgの減量に挑み見事に勝利しました。一方、中山グランドジャンプでは、63.5kgという重量級での騎乗を見事に成功させました。この15.5kgもの体重差は、平地と障害の両方で騎乗してきた高野氏だからこそ成し得た、類まれな記録と言えるでしょう。

高野氏の人生は、努力と決断の連続でした。困難を乗り越え、常に前を向いて進み続ける彼の姿勢は、多くの人々に勇気を与えることでしょう。これからも調教助手として、競馬界に貢献していくことを期待しています。

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