魏相

魏相（ぎ しょう）

魏相（紀元前？年 - 紀元前59年）は、前漢時代の政治家であり、字（あざな）を弱翁（じゃくおう）と称しました。済陰郡定陶県（せいいんぐんていとうけん）の出身でしたが、後に平陵（へいりょう）へ移り住みました。

生涯

魏相は、『易経』を学び、その学識が認められて郡の卒史（役人）から賢良（学識のある人物）として推挙されました。その後、茂陵県令（ぼりょうけんれい）に任じられると、その統治手腕によって茂陵は大いに治まったと伝えられています。

河南太守（かなんたいしゅ）に昇進してからは、豪族も憚るほどの厳格な政治を行いました。しかし、丞相であった田千秋（でんせんしゅう）が亡くなった際、洛陽武庫令（らくようぶこれい）を務めていた田千秋の子が、父の死によって後ろ盾を失い、魏相に罪で囚われることを恐れて辞職しました。このことが当時の権力者であった霍光（かくこう）の不興を買い、魏相は投獄されることとなります。

しかし、河南郡の役人で長安で働いていた者およそ3000人が、自分たちがもう1年働くことで魏相の罪を贖いたいと霍光に申し出ました。同様に、河南郡でも1万人にも及ぶ人々が魏相のために嘆願書を提出しました。刑が確定しないまま冬を越したため、魏相は罪を許されて釈放されました。

その後、再び茂陵県令に任じられ、次いで揚州刺史（ようしゅうしし）として郡国を監察し、多くの不正を暴いて処分しました。この時、親交のあった丙吉（へいきつ）（霍光の部下）から、「もう少し自重し、能力をひけらかさない方が良い」と忠告を受け、厳格さを多少抑えることにしました。

2年後には諫大夫（かんたいふ）となり、再び河南太守に昇進しました。数年後、宣帝（せんてい）が即位すると、大司農（だいしのう）に任じられ、翌年には御史大夫（ぎょしだいふ）に昇進しました。

霍光が亡くなると、息子の右将軍霍禹（かくう）や、霍去病（かくきょへい）の孫である領尚書事（りょうしょうしょじ）の霍山（かくさん）らが権力を握りましたが、魏相は宣帝の皇后の父である平恩侯（へいおんこう）許広漢（きょこうかん）を通じて、宣帝に霍禹らを排除すること、及びそれまで領尚書事が上奏文を皇帝より先に検閲していたことを止めるよう進言しました。宣帝はその進言を受け入れ、魏相に給事中（きゅうじちゅう）を加えました（これは内朝に入り、皇帝の側近として仕えることを意味します）。

宣帝は魏相の進言に従い、霍光の息子たちを退け始めました。また、丞相の韋賢（いけん）が引退すると、魏相を後任の丞相に任命しました。霍光の息子たちは魏相を恨み、魏相を殺害して宣帝を廃位するというクーデターを計画しましたが、事前に発覚し、彼らは処刑されました。霍光の息子たちを排除し、宣帝が親政を始めると、魏相はその丞相として臣下を統率しました。

魏相は、これまでの賈誼（かぎ）・鼂錯（ちょうそ）・董仲舒（とうちゅうじょ）といった名臣の上奏などを再編集して施行したり、陰陽の調和を図ることを進言するなどの実績を挙げました。また、丞相府の部下が各地に派遣されて戻ってきた後には、各地の異聞や賊、天変地異などを報告させ、郡国が報告していないものがあれば上奏しました。

神爵3年（紀元前59年）に亡くなりました。

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