韋賢

韋賢（い けん）

韋賢は、紀元前143年から紀元前62年にかけて生きた、前漢時代の政治家です。字（あざな）は長孺（ちょうじゅ）といい、魯国騶県（ろこくすうけん）の出身です。

概要

韋賢の高祖父にあたる韋孟（いもう）は、楚王（そおう）の劉交（りゅうこう）、劉郢客（りゅうえいかく）、劉戊（りゅうぼう）に仕え、楚王の劉戊を諫めたことで知られています。

韋賢自身は、儀礼（ぎらい）、尚書（しょうしょ）、詩経（しきょう）といった古典に通じており、「騶魯の大儒（すうろのたいじゅ）」と呼ばれるほどでした。その学識を買われ中央に徴用されると、博士（はかせ）となり、給事中（きゅうじちゅう）として昭帝（しょうてい）に詩経を教授しました。

その後、光禄大夫（こうろくたいふ）、詹事（せんじ）と昇進し、ついには大鴻臚（だいこうろ）にまで至りました。昭帝が後継者を指名しないまま崩御すると、大将軍の霍光（かくこう）らと共に、宣帝（せんてい）を皇帝として擁立する功績を挙げ、関内侯（かんないこう）を賜りました。その後、長信少府（ちょうしんしょうふ）となり、本始3年（紀元前71年）には、前任者の蔡義（さいぎ）の死を受けて丞相（じょうしょう）に任命され、扶陽侯（ふようこう）に封じられました。

地節3年（紀元前67年）には、高齢を理由に丞相を引退することを願い出て許可され、金百斤（きんひゃくきん）と屋敷を賜りました。丞相が自ら引退を申し出るようになったのは、韋賢が最初であるとされています。元康4年（紀元前62年）に82歳で亡くなり、節侯（せっこう）と諡（おくりな）されました。

韋賢には4人の息子がいました。長男の韋方山（いほうざん）は早世し、次男の韋弘（いこう）は東海太守（とうかいたいしゅ）となりました。三男の韋舜（いしゅん）は、故郷である魯の父祖の眠る墳墓を守るため、出仕しませんでした。そして、四男の韋玄成（いげんせい）は、父と同じく丞相となりました。漢の時代において、親子2代で丞相となったのは、韋賢・韋玄成の他に、周勃（しゅうぼつ）・周亜夫（しゅうあふ）、曹操（そうそう）・曹丕（そうひ）の3組しかいません。

韋賢の故郷である騶では、韋氏が経書を学んで栄えたことから、「子孫に金を遺すよりも経書を遺す方が良い」という諺が生まれたと言われています。このことからも、韋賢一族が学問を重んじていたことがうかがえます。

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