魚魯愚鈔

魚魯愚鈔（ぎょろぐしょう）について

『魚魯愚鈔』は、平安時代から南北朝時代にかけての除目に関する資料を集めた有職故実書です。この書物の著者は、当時の官僚として知られた太政大臣洞院公賢です。本書は全8巻から成り、さらに別巻である『魚魯愚別録』も同様に8巻あります。

この書の内容は、除目に関連する申文や大間書のほか、古典文献である『清涼記』や『西宮記』などからの情報も含まれています。その目的は、当時の社会における儀式や習慣、法律に関する指針を提供することでした。『魚魯愚鈔』は、古くは江戸時代の平田職忠の著作とされていましたが、近年の研究において時野谷滋や細谷勘資によって、著者は洞院公賢であると結論づけられました。

本書が成立した時期については、平安時代の承和5年（838年）から南北朝時代の貞和3年（正平2年/1347年）までの記録が含まれており、公賢が亡くなる延文5年（正平15年/1360年）までの間に書かれたと考えられています。特に、実弟であり猶子でもあった洞院実守が奥書に公賢の著書であると記していることから、貞和3年以降の13年間のいずれかの時期に執筆されたとするのが一般的な見解です。

内容の構成は、第一巻と第二巻が蔵人に関する内容（上下）であり、第三巻から第六巻は外記に分類され（甲乙丙丁）、第七巻は外記における蔵人方随召文書が取り上げられています。第八巻は雑々任人諸例について扱っています。これにより、先例と実務に関する記事を引用し、当時の制度やプロセスを明確化しています。

また、別巻では儀式に関連する詳細な記述がされており、本書の重要性がさらに強調されています。『魚魯愚鈔』は、原本に近いとされる系統（内閣文庫や平安博物館所蔵本）と、洞院実守による書写が伝えられたものの中に一部脱落や錯簡が見られる系統（尊経閣文庫所蔵本）との二つの系統が存在しています。

本書は、日本の歴史における官僚制度や儀式の理解を深めるための貴重な資料であり、今後の研究にも重要な影響を与えることでしょう。特に、除目に関する制度やその変遷を理解するための基盤となるため、研究者や歴史愛好者にとって欠かせない文献となっています。

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