魯穆 (明)

明代の官僚、魯穆（ろ ぼく）の生涯

魯穆（1381年 - 1437年）は、明代に活躍した官僚であり、字を希文と称しました。本貫は台州天台県にあり、その生涯は正義を貫き、民衆のために尽力したものでした。

立身と初期の活躍

1406年（永楽4年）に科挙に合格し、進士となった魯穆は、御史に任じられました。当時、皇太子朱高熾が監国を務めていましたが、魯穆はたびたび上書を行い、政治に対する意見を述べました。特に、漢王朱高煦の官吏としての不正行為に対しては、他の者が遠慮して何も言えない状況の中、果敢に上書して弾劾しました。この行動は、彼の正義感と勇気を如実に示しています。

福建での活躍

その後、魯穆は福建僉事に転任しました。福建では、刑罰の濫用や冤罪を正し、豪強による民衆への横暴を抑えることに尽力しました。彼の活躍は、具体的な事件を通してよく分かります。例えば、泉州の李某という人物が広西の官に任じられた際、その姻戚である富民の林某が下僕を使って李を道中で毒殺し、李の妻を自分の内室に入れました。この事件に対して、李の一族が官に訴えましたが、司法官は林からの賄賂を受け取り、訴えた者を逆に罪に陥れ、長期間獄に繋いでいました。魯穆は、この事件を徹底的に調査し、林の罪を明らかにし、正義を実現しました。

また、漳州の民である周允文には子が無く、甥を後継者にしていましたが、晩年に妾が子を産んだため、財産の一部を甥に分け与え、妾の子を後継者にしました。周允文が亡くなると、甥は妾の子を周允文の子ではないと主張し、後継者の地位を奪い、全ての財産を奪いました。この訴えに対し、魯穆は県の有力者や周氏の一族を集め、密かに妾の子を他の子供たちの中に混ぜて、誰が周允文に似ているかを尋ねました。皆が妾の子を指して周允文に似ていると言ったため、妾の子が周允文の遺産を相続することを認めました。

これらの事件を通じて、魯穆は公平で公正な裁きを行い、民衆からの信頼を厚くしました。彼は、その厳格な態度から「魯鉄面」と呼ばれましたが、それは彼の公平無私な姿勢を象徴するものでした。また、魯穆は、自分の家族が法を犯した場合でも、一切の遠慮をせずに裁いたと伝えられています。この徹底した姿勢が、彼の正義感を物語っています。

中央での活躍と晩年

魯穆の功績は、当時の高官である楊栄によって北京の朝廷に推薦され、その才能を認められました。1435年（宣徳10年）に英宗が即位すると、魯穆は右僉都御史に抜擢され、さらに重要な役職を任されることになりました。1436年（正統元年）には、大名府で発生した飛蝗（バッタ）の被害を鎮めるため、その対策に尽力しました。

1437年（正統2年）、魯穆は北京に戻った後、病に倒れ、6月戊辰に57歳で亡くなりました。彼の死後、その功績を称え、「端毅」という諡号が贈られました。魯穆の子である魯崇志は、後に応天府尹という要職を務め、父の意志を継いで活躍しました。

結論

魯穆の生涯は、正義を貫き、民のために尽くした官僚の模範と言えるでしょう。不正を許さず、民衆の紛争を公平に解決した彼の足跡は、現代においても私たちに多くの教訓を与えてくれます。彼の不屈の精神と民への深い愛情は、後世に語り継がれるべきものです。

参考文献: 『明史』巻158 列伝第46

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