鯉名の銀平 (1961年の映画)

映画『鯉名の銀平』

『鯉名の銀平』（こいなのぎんぺい）は、1961年8月27日に大映によって配給公開された日本の股旅時代劇映画です。長谷川伸による同名の著名な戯曲を原作としており、田中徳三が監督を務め、当時の大映を代表するスターであった市川雷蔵が主演を務めました。この物語はそれ以前にも数度にわたり映画化されており、本作は数ある映像化作品の一つとして知られています。

物語の概要（あらすじ）

物語は、かつてはやくざの世界に身を置いていた二人の男、鯉名の銀平と爪木の卯之吉を中心に展開します。彼らは過去と訣別し、現在は揃って堅気となり、船大工として働いていました。平穏な日々を送っていた二人でしたが、一人の女性、お市（中村玉緒）を巡って運命が大きく動き始めます。銀平と卯之吉は共にお市に心を寄せていましたが、彼女は卯之吉を選び、夫婦となることを決めます。銀平は複雑な思いを抱えながらも二人の幸せを見守ろうとします。

しかし、ある日、卯之吉が過去の因縁からやくざに襲われる危機に見舞われます。そこへ駆けつけたのは銀平でした。銀平は迷うことなく卯之吉を助け出しますが、この一件を機に、自らの気持ちに整理をつけるかのように、あるいは新たな道を模索するかのように、静かに下田の町から姿を消します。それから四年という歳月が流れます。それぞれの道を歩んでいた銀平と卯之吉でしたが、四年後、運命に導かれるようにして、鯉名の銀平は再びかつて暮らした下田の地へと戻ってくるのでした。再会した彼らの間に、過去の出来事と変わらぬ友情、そして秘めたる想いが交錯し、物語はクライマックスへと向かいます。

キャスト

本作には、主演の市川雷蔵をはじめ、豪華な俳優陣が出演しています。主要なキャストは以下の通りです。

鯉名の銀平: 市川雷蔵
お市: 中村玉緒
爪木の卯之吉: 成田純一郎
徳三郎: 大辻伺郎
黒目の又五郎: 名和宏
五兵衛: 石黒達也
大鍋の島太郎: 荒木忍
岩角の多治郎: 水原浩一
洞窟の作蔵: 市川謹也
渋谷の百助: 寺島貢
三五郎: 玉置一恵
帆立の丑松: 安部徹
江波太十郎: 香川良介
沖時男

市川雷蔵が情に厚くも孤独な股旅の男、銀平を演じ、中村玉緒がお市役で二人の男の人生に関わる重要な役どころを担いました。また、成田純一郎が銀平の親友でありながら恋敵となる卯之吉を演じ、物語に深みを与えています。

スタッフ

本作の制作を支えた主なスタッフは以下の通りです。

監督: 田中徳三
企画: 高森富夫
撮影: 武田千吉郎
美術: 太田誠一
音楽: 斎藤一郎
編集: 山田弘
* 脚本: 犬塚稔

田中徳三監督が、長谷川伸の原作が持つ人情と劇的な展開を、大映股旅時代劇のスタイルで見事に映像化しました。脚本は犬塚稔が手掛け、物語の骨子をしっかりと構築しています。撮影は武田千吉郎、音楽は斎藤一郎が担当し、作品の世界観を創り上げています。

その他

本作は『雑婚時代』（田中重雄監督）と二本立てで公開されました。長谷川伸の「鯉名の銀平」は、義理人情や男の生き様を描いた股旅物として日本の演劇や映画において繰り返し上演・製作されてきた古典ともいえる作品であり、1961年版もその系譜に連なる一本として、市川雷蔵の魅力と相まって多くの時代劇ファンに記憶されています。

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