荒木忍

荒木忍：日本の映画史を彩るベテラン俳優の生涯

荒木忍（1891年4月26日 - 1969年1月8日）は、日本のサイレント映画時代からトーキー時代にかけて活躍した、長寿を誇るベテラン俳優です。新潟県に生まれ、東京瓦斯（現東京ガス）の配管工として働いていた時期を経て、地方巡業劇団に参加。その後、1914年には浅草公園六区の常盤座に出演するなど、舞台俳優としての経験を積みました。

映画界への転身と激動の時代

1921年、荒木は日活向島撮影所に入社し、映画俳優としてのキャリアをスタートさせます。同撮影所は新派から新劇への過渡期にあり、荒木は時代の変遷を肌で感じながら数々の作品に出演しました。日活向島撮影所での初期の代表作には、『破れ三味線』、『不如帰』、『京屋襟店』などがあります。

1922年末には、日活向島撮影所の幹部俳優らが国際活映へ集団移籍する事件が勃発。荒木もこの渦中に巻き込まれる形で国際活映に移籍しますが、同社が翌年製作を停止したため、自ら一座を結成し、地方巡業に出ます。

マキノプロダクションでの活躍

1924年、荒木は京都に移り、牧野省三が主宰するマキノ映画製作所に入社。その後、東亜キネマに吸収合併されたのちも同社に留まり、マキノ正博が率いるマキノ・プロダクションでも活躍を続けます。この間、京都府京都市北区等持院西町に居を構え、終生この地を離れることはありませんでした。マキノ・プロダクションでは、『新竹取物語』、『青い目の人形』など多くの作品で主演を務め、その存在感を示しました。

牧野省三の死後もマキノ・プロダクションに所属し、新体制を支える中堅俳優として活躍。数々の名作に出演し、その演技力は高い評価を得ていました。

新興キネマ、そして大映へ

1931年、マキノ・プロダクションを退社した荒木は新興キネマに移籍。その後、第二次世界大戦下の統制により新興キネマが日活と合併して大映が誕生すると、大映京都撮影所に所属し、戦時中も映画界で活動を続けます。

大映では、戦後も亡くなる直前まで脇役や重鎮役として数多くの作品に出演。マキノ省三の三男・マキノ眞三が設立したマキノ映画社や新光映画の作品にも出演するなど、幅広い活動を見せていました。また、日活向島撮影所時代の先輩である衣笠貞之助や、溝口健二の作品にも積極的に出演し、所属映画会社を超えた交流も垣間見ることができます。1959年までは東映京都撮影所や松竹京都撮影所など他社の作品にも出演していましたが、1960年以降は、大映京都撮影所作品への出演に専念しました。

大映京都撮影所の俳優部長だった奥田久司は、荒木の誠実さと人柄について、賃金の遅配が頻発する中でも、荒木が決して苦情を言わず、むしろ周囲を慰めていたエピソードを記しています。

晩年と死

荒木は1969年1月8日、胃がんのため77歳で死去。生涯を京都で過ごし、最晩年まで映画界に貢献しました。遺作となったのは、1968年公開の『牡丹燈籠』です。長女の荒木美代子（芸名：荒木雅子、旧芸名：忍美代子）は、女優として活躍していました。

膨大なフィルモグラフィ

荒木のフィルモグラフィは膨大で、日活向島撮影所、国際活映、マキノ映画製作所、東亜キネマ、マキノ・プロダクション、新興キネマ、大映京都撮影所など、多くの映画会社で活躍しました。サイレント映画時代からトーキー映画時代まで、数多くの作品に出演し、日本の映画史に大きな足跡を残しています。彼の出演作品リストは、本記事の記述からは読み取れないほどの量になります。

荒木忍は、日本の映画史において、時代を跨いで活躍した稀有な存在と言えるでしょう。彼の卓越した演技力と、誠実な人柄は、後世に長く語り継がれるべきものと言えるでしょう。

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