鳥居忠恒

鳥居忠恒の生涯と歴史的背景

鳥居忠恒（とりい ただつね）は、江戸時代前期の大名であり、出羽国山形藩の第2代藩主として知られています。彼は従四位下の官位を持ち、伊賀守および左京亮を務めました。忠恒は初代藩主である鳥居忠政の長男であり、1636年に33歳でこの世を去るまでの複雑な人生を送っています。

初代藩主からの家督相続

鳥居忠恒は寛永5年（1628年）に父の死を受けて家督を継承しましたが、生まれながらに病弱であったため、幕府の公務にはほとんど関与できませんでした。この状況が彼の後の運命に大きな影響を与えることになります。続いて、寛永9年（1632年）には、徳川忠長が改易されたことに関連して、従兄弟である鳥居忠房の預かりを命じられました。これも彼にとっては重い任務でした。

家族関係と遺言

忠恒は正室の菊との間に子供がいなかったため、家督については異母弟の忠春との関係が複雑でした。忠恒と忠春の生母は不仲であったため、忠恒の臨終の際には忠春を養子にしない意思を示しました。代わりに、彼は新庄藩に養嗣子としている同母弟の戸沢定盛に家督を託すという遺言を残したのです。しかし、鳥居家の後継問題は幕府の法律に反するものであり、忠恒の選択は大きな波紋を呼ぶこととなりました。

幕府の反応・家名の危機

忠恒の遺言に関する問題が生じたため、大政参与の井伊直孝は幕府に対して忠恒の行動を批判する意見を述べました。「世嗣の事をも望み請ひ申さざる条、憲法を背きて、上をなみし奉るに似たり」という言葉からも、幕府の怒りとその厳格な姿勢が伺えます。結果、幕府は忠恒の所領を没収するという厳しい処分を下しました。

一方で、忠恒の父である忠政や井伊直勝との間に過去の対立があったことも、鳥居家の厳しい状況を引き起こす一因となったという見解があります（『徳川実紀』参照）。ただし、祖父の元忠が残した功績が評価され、末っ子の忠春は新知として信濃の高遠藩3万石を与えられ、家名の存続を許されました。

家系と家族

忠恒の父は初代藩主・鳥居忠政（1566年 - 1628年）で、母は滝川雄利の養女でした。正室は森忠政の娘である菊で、忠恒与えた子供はありませんでしたが、女子の宗姫が前田利次の正室となったことで、鳥居家の血筋は続いています。

このように、鳥居忠恒は自身の病弱さと家族の状況から、多くの困難に直面する大名として歴史に名を刻みました。幕府との不和や家督相続に関する問題が、彼の人生に深く影響を及ぼしたことを思うと、その波乱万丈な生涯には多くの教訓が隠されているのではないでしょうか。

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