鳥海青児

鳥海青児：土と光を描く画家

鳥海青児（ちょうかい せいじ、1902年3月4日 - 1972年6月11日）は、20世紀を代表する日本の洋画家の一人です。神奈川県平塚市生まれ。本名は正夫。土壁のような独特の質感と、茶色を基調とした渋い色彩が特徴的な作品群は、見る者に深い印象を与えます。

青児の生い立ちと画業

1902年、神奈川県で生まれた鳥海は、藤嶺中学校（現：藤嶺学園藤沢高等学校）を経て、関西大学経済学部を卒業しました。在学中の1922年頃から「青児」を筆名として用いるようになります。学生時代から油彩画を始め、1924年には春陽会展に入選。その後も同展で連続入選を果たし、画家としての道を歩み始めます。

1930年には、画家としての研鑽を積むため、フランスへ渡欧。パリを拠点に、アルジェリアやモロッコ、スペイン、オランダなどを旅し、西洋絵画の巨匠たちの作品から多大な影響を受けます。この経験は、後の彼の作風に大きな変化をもたらしました。

帰国後も、春陽会を中心に作品を発表し続けましたが、1943年には春陽会を脱退、独立美術協会会員となります。

戦後は鎌倉に移住し、精力的に創作活動を続けました。1957年には、原精一氏とともにヨーロッパを旅行。サンパウロ・ビエンナーレに出品するなど、国際的な活動も展開。ニューヨーク近代美術館にも作品が収蔵されています。晩年は、中南米への旅行も経験し、その多様な経験は作品に反映されています。1972年、肺炎のため70歳で没しました。

鳥海青児の画風

鳥海青児の画風は、独特の技法と、深く心に響く色彩感覚によって特徴づけられます。砂を混ぜた絵具を厚く塗り重ね、それをノミで削り取るという、独特の技法を用いています。この技法によって生まれる、ざらざらとした絵肌の重厚な質感は、彼の作品に独特の深みと奥行きを与えています。

また、茶色を基調とした渋い色調は、彼の作品全体を貫く特徴であり、日本の土壌と深く結びついた、独特の情緒を醸し出しています。彼の作品からは、土のぬくもりや、静謐な自然の風景、そして旅先で出会った人々の温かさが感じられます。

彼の作品には、風景画が多く含まれますが、人物画や静物画にもその独特の技法と色彩感覚が用いられており、幅広い表現力を示しています。

代表作

鳥海青児の作品は、国内外の美術館に数多く収蔵されています。代表的な作品には、以下のものがあります。

『平塚風景』（1926年） 神奈川県立近代美術館
『水無き川』（1928年）
『うづら』（1929年） 宮城県美術館
『闘牛』（1932年） 茨城県近代美術館
『ノートルダム』（1933年） メナード美術館
『川沿いの家』（1934年） 大原美術館
『信州の畠』（1936年） 東京都現代美術館
『道化』（1936年〜1938年） 平塚市美術館
『沖縄風景』（1940年） 平塚市美術館
『オランダ水差しとレモン』（1949年〜1951年） 平塚市美術館
『ピカドール』（1958年） 平塚市美術館
『壁の修理』（1959年） 平塚市美術館
『昼寝するメキシコ人』（1964年） 神奈川県立近代美術館
『フラメンコ』（1971年） 平塚市美術館

まとめ

鳥海青児は、独自の技法と深い感性で、日本の洋画界に大きな足跡を残した画家です。彼の作品は、日本の風景や文化、そして彼が旅を通して出会った様々なものへの深い愛情と、静謐な美意識に満ち溢れています。彼の作品を通して、私たちはその奥深い世界に触れることができるでしょう。多くの美術館に作品が所蔵され、現在でも多くの人々を魅了し続けています。彼の作品は、私たちに日本の美、そして世界の様々な文化の豊かさを改めて感じさせてくれます。

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