鳳凰殿

鳳凰殿：シカゴ万博における日本の美の象徴

鳳凰殿は、1893年のシカゴ万博（コロンブス世界博覧会）において、日本が平等院鳳凰堂をモデルに建造した建物です。この壮麗な建築物は、単なる展示物としてだけでなく、当時の日本が東洋の一大帝国であることを世界に示すという重要な役割を担っていました。

鳳凰殿の概要

鳳凰殿は、平安、足利、江戸という日本の3つの時代を代表する建築様式を融合させたものでした。正面部分は江戸時代の豪華さを象徴し、諸侯の邸宅を模した約20坪の広さを持っていました。右側部分は銀閣寺の一室を再現し、室町時代の簡素な趣を表現。左側部分は宇治の鳳凰堂を参考に、藤原時代の優雅さを表現していました。

岡倉天心は、鳳凰殿の設置について、「日本は古代から鳳凰の生誕の地と考えられており、友好国たる米国での博覧会の成功を願い、鳳凰の喜びをもって主催者の希望に応える」と述べています。鳳凰殿は、日本の美意識と精神性を象徴する存在として、万博に華を添えました。

芸術品の数々

鳳凰殿の内部は、図画、山水画、襖絵、天井絵など、数多くの芸術品で飾られていました。高村光雲による鳳凰の彫刻が施された欄間の一部は、現在もシカゴ美術館やイリノイ大学シカゴ校に所蔵されています。巨勢小石、川端玉章、橋本雅邦、狩野友信など、多くの著名な芸術家が鳳凰殿の装飾に携わりましたが、その多くは残念ながら失われ、所在は不明です。

建設の様子

鳳凰殿の設計は東京美術学校に一任され、大倉喜八郎が設立した日本土木会社（現在の大成建設）が建設を担当しました。1893年9月には、日本から25名の職人や専門家が渡米し、現地での作業にあたりました。

建設地では日本と同様の地鎮祭が執り行われ、その様子はシカゴの人々の関心を集めました。職人たちの仕事ぶりや、徐々に完成していく日本建築の様子は、多くの見物人を惹きつけ、工事の妨げになるほどでした。完成時には、職人たちが半纏姿で鳳凰殿の前に並び、記念写真を撮影しています。

1894年3月31日には落成式が開催され、日米和親条約締結から40周年という記念すべき日に、多くの招待客が鳳凰殿の完成を祝いました。

万博終了後と焼失

万博終了後、跡地はジャクソン公園となり、鳳凰殿はシカゴ市に寄贈されました。しかし、その後は荒れるに任され、1935年に修復されるまでの間、放置された状態でした。真珠湾攻撃までは日本人業者による茶店が営業されていましたが、戦争中は公園事務局の倉庫として使用されました。

1946年、鳳凰殿は不運にも火災に見舞われ、最終的には少年による放火が原因で全焼してしまいました。山田久美子の論文では、焼失の原因は反日感情による焼き討ちではなく、管理の難しさやいたずらによる放火であるという見解が示されていますが、真相は不明です。

現在の鳳凰庭園

1992年、シカゴ市の姉妹都市である大阪市によって、ジャクソン公園内に日本庭園が再整備され、「大阪ガーデン」と名付けられました。2013年には、万博終了から120年を記念して、日米交流の促進を目的とした桜の植樹が始まりました。そして2014年、庭園は「The Garden of the Phoenix（鳳凰庭園）」と改名され、その名に鳳凰殿の記憶を今に伝えています。

もう一度検索