鷲尾克己

鷲尾克己：若き陸軍大尉、特攻に散った生涯

鷲尾克己（わしお かつみ）は、1923年4月1日に兵庫県明石市で生まれ、1945年5月11日に沖縄で戦死した大日本帝国陸軍の軍人です。最終階級は陸軍大尉。

生い立ちと学業

鷲尾は幼い頃から学業、運動共に優秀で、小学校卒業時には担任教師がその才能を惜しみ、家庭環境に苦労しながらも上級学校への進学を勧めたほどでした。知人の援助もあり、旧制第一神戸中学校に入学。剣道部では「神戸一中の鷲尾」として知られ、実行力に長けた委員長も務めました。

1941年に第一神戸中学校を卒業後、旧制第三高等学校を受験するも不合格。浪人生活を経て、1942年に第一高等学校文科甲類に合格し、撃剣部に入部。寮生活を送ります。当時、父親が病弱だったため、家族は神戸市から明石市へ移り、父親の看病に追われる日々でした。

戦争と学徒出陣

1943年、ミッドウェー海戦以降、戦局が悪化の一途をたどる中、兵士不足を解消するため東條英機は「学生猶予の解除」を決定。同年12月1日、鷲尾のもとにも召集令状が届きます。入隊前日、入院中の父親に別れを告げますが、父親は無理をして出勤。それが原因で容態が悪化し、1944年1月27日、鷲尾が転科試験に向かう途中に危篤の知らせが届き、翌朝に亡くなりました。しかし、鷲尾は父親の死を知らされぬまま、2月9日に陸軍特別操縦見習士官に合格。合格の喜びよりも、父親の死による悲しみが勝る日となりました。

特攻隊員として

1945年、佐賀県目達原基地での訓練中、鷲尾を含む特別見習士官全員が特攻隊員に命じられます。技術が優秀な者から先発するという指示でした。三重県明野基地へ移動する前に、鷲尾は明石市の母親のもとへ立ち寄り、自分が死ぬことをそれとなく伝えようとしますが、母親の無理な笑顔を見て、結局特攻で死ぬことを告げられませんでした。

沖縄へ、そして戦死

1945年5月11日午前6時35分、鷲尾克己は神風特別攻撃隊第55振武隊員として沖縄へ出撃。22歳という若さで、帰らぬ人となりました。

参考文献

高木俊朗 『遺族 : 戦没学徒兵の日記をめぐって』 出版協同社、1957年7月20日初版。
高木俊朗 『特攻基地知覧』 角川書店〈角川文庫〉。
高木俊朗 『陸軍特別攻撃隊』 1-3巻、文藝春秋〈文春文庫〉。
『あゝ同期の桜 かえらざる青春の手記』 海軍飛行予備学生第十四期会編、光人社。
鈴木勘次 『特攻からの生還 知られざる特攻隊員の記録』 光人社。
森山康平 『図説特攻』 太平洋戦争研究会編、河出書房新社。
『一億人の昭和史 特別攻撃隊』 毎日新聞社。
『きけ わだつみのこえ|きけ_わだつみのこえ』 日本戦没学生記念会編、岩波書店〈岩波文庫〉。

関連項目

* 神風特別攻撃隊

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