鷲羽山トンネル

鷲羽山トンネル：瀬戸大橋を支える、世界初の四つ目状トンネル

鷲羽山トンネルは、岡山県倉敷市に位置し、鷲羽山を貫通する道路と鉄道の併用トンネルです。瀬戸大橋と接続し、その複雑な構造と歴史的背景から、技術的な興味深さと景観上の重要性を併せ持っています。

独特の四つ目状構造

このトンネルの最大の特徴は、世界初の「四つ目状」構造であることです。上部2本が瀬戸中央自動車道の道路用トンネル、下部2本が四国旅客鉄道（JR四国）本四備讃線（瀬戸大橋線）の鉄道用トンネルとして使用されています。下部2本の鉄道用トンネルは、将来的な四国新幹線建設を見越して、在来線用と新幹線用としてそれぞれ複線で設計されました。しかし、新幹線建設の目処が立っていない現状では、在来線の上下線として使用されています。上り線は新幹線用トンネルの下り線部分を使用し、下り線は在来線用トンネルの上り線部分を使用するという、やや複雑な線路配置となっています。

景観保護と技術的工夫

当初、この区間は山を切り開くオープンカット工法での建設が予定されていました。しかし、瀬戸内海の美しい景観を保全するため、トンネル方式に変更されました。この決定は、景観保護と交通インフラ整備のバランスを重視した結果と言えるでしょう。

鉄道トンネル部は、隣接する神道山トンネルと一体的に機能しています。トンネル内では、線路が新幹線用トンネルと在来線用トンネル間を移動する複雑な経路をとります。下り線は神道山トンネル内で新幹線用トンネル側に移動し、神道山トンネル内を複線で通過した後、児島駅寄りのバラスト軌道部分で在来線側にスライドして児島駅方向へ向かいます。このスライド部分にバラスト軌道が用いられているのは、将来の新幹線敷設工事において軌道の移設を容易にするためです。もし、すべてをスラブ軌道にしてしまうと、移設が困難になるためです。

トンネルの概要

道路部分: 約205m
鉄道部分: 約230m

周辺環境と関連施設

鷲羽山トンネルは、瀬戸内海国立公園内に位置し、鷲羽山ハイランドや鷲羽山スカイラインといった観光地にも近接しています。瀬戸大橋、瀬戸中央自動車道、本州四国連絡道路、本四備讃線といった、広域的な交通ネットワークの中枢を担う重要な役割を担っています。

まとめ

鷲羽山トンネルは、その複雑な構造、景観保護への配慮、そして将来を見据えた設計など、多くの技術的・社会的な要素が凝縮された、重要な交通インフラです。瀬戸大橋と共に、地域の観光や経済発展に大きく貢献しています。将来的な四国新幹線建設の進展次第では、その機能はさらに進化していく可能性を秘めています。

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