バラスト軌道

バラスト軌道：鉄道を支える道床の技術

バラスト軌道とは、鉄道の線路を支える道床の一種で、古くから世界中で広く利用されてきた伝統的な工法です。砕石や砂利などのバラストを路盤の上に敷き詰め、その上に枕木を配置し、レールを敷設する構造となっています。

バラストの役割と特性

バラストの主な役割は、列車の荷重を路盤に効率的に分散させることです。これにより、レールの沈下や変位を防ぎ、安定した走行を確保します。また、バラストの粒径や形状によって、排水性、振動吸収性、雑草抑制効果なども期待できます。

バラスト材料としては、花崗岩、ケイ岩、安山岩などの堅牢な岩石が用いられ、通常15～70mm程度の粒径に破砕されます。粒径の選定は重要で、粒径が大きすぎると空隙が増えて沈下しやすく、小さすぎると粒子間の結合が強くなり、排水性が悪化するなどの問題が生じます。砂利を使用する場合もあります。砂利は比較的入手が容易ですが、支持力が砕石に比べて劣るため、列車の本数が少ない線区などで用いられることが多いです。

バラストの厚さは線路の規格によって異なりますが、通常150～250mm程度です。1kmあたりのバラスト使用量は、約1000～2000立方メートル（約1500～3000トン）と莫大な量になります。

バラスト軌道の歴史

バラスト軌道の起源はイギリスのニューカッスル周辺にまで遡ります。石炭輸送船がニューカッスルに戻る際に、船のバラストとして使用された砂利を、軌道下の路盤強化に転用したことが始まりとされています。

バラスト軌道の長所と短所

バラスト軌道は、低コストで施工できること、優れた排水性を持つこと、そして振動や騒音を低減できることから、長年にわたって広く利用されてきました。しかし、強度が低く、変位が生じやすいという短所もあります。そのため、高速鉄道には必ずしも適しているとは言えず、保守管理に手間がかかるという課題も抱えています。

特に、列車の走行による軌道狂いの修正やバラストの摩耗・劣化による更新作業は、人手による作業が多く、列車本数が多い路線では作業時間の確保が困難となっています。また、高速走行時のバラスト飛散や、積雪地域における冬季の保守管理も大きな課題です。

高速鉄道における課題と対策

高速鉄道では、バラストの飛散や、路盤の凍結・融解による軌道変位が大きな問題となります。東海道新幹線や、イタリアのフレッチャロッサ、JR北海道の石勝線などを例に、高速走行によるバラスト飛散や、冬季の凍結・融解による軌道変位対策の事例、そして減速運転などの対策が講じられている現状を紹介しました。これらの事例からもわかる通り、バラスト軌道は高速鉄道においては様々な課題を抱えています。

バラスト軌道とその他の軌道構造

近年では、ミリメートル単位の正確さが要求される保線作業の効率化や経済性の観点から、スラブ軌道などの採用が増えてきています。しかし、地盤沈下が生じるような場所では、バラスト軌道の方が修正が容易であるというメリットもあります。

まとめ

バラスト軌道は、鉄道の歴史と共に発展してきた伝統的な道床構造です。低コストで施工できること、優れた排水性を持つことなどのメリットがあり、現在も広く利用されていますが、高速化や保守管理の効率化という観点からは、課題も多く残されています。今後も、技術革新や保守管理の高度化によって、バラスト軌道の更なる発展が期待されます。

もう一度検索