鹿子木員信

鹿子木員信の生涯と業績

鹿子木員信（かのこぎ かずのぶ、1884年11月3日 - 1949年12月23日）は、日本の著名な哲学者であり、海軍軍人としても知られています。最終的には海軍機関中尉の階級を持ち、文学博士の学位を獲得しました。彼の学位論文は「プラトン哲学の研究」という内容で、彼の哲学的な探求心が示されています。

経歴

鹿子木は1884年に東京府で生まれました。彼の家系は熊本藩士族の流れを汲み、旧制東京府立第一中学校から海軍予備校を経て、1904年に海軍機関学校を卒業しました。海軍では「八雲」乗組みとして日本海海戦に参加し、その際、漂流する非戦闘員のロシア人従軍牧師を救助した経験が命運を大きく変えました。この出来事は彼に哲学的な迷いをもたらし、その結果、海軍を退役して哲学の研究に専念することになりました。

哲学研究への移行

彼は1906年に京都帝国大学の哲学科に入学、この在学時代に近衛文麿との関係も深まりました。卒業後は慶應義塾大学の教授に就任し、1907年からはアメリカ、ドイツへの留学を経験しました。アメリカではニューイングランド州のユニオン神学校で学び、ドイツでは様々な哲学的思想に触れました。1917年には東京三田の統一教会でポーランド系ドイツ人のコルネリアと結婚し、その後「プラトン哲学の研究」を東京帝国大学に提出し、文学博士号を取得しました。

九州時代と政治活動

1926年には九州帝国大学の教授に就任し、法文学部長も務めました。彼の教え子には、哲学者である桑木務が名を連ねています。また、1939年には政治活動にも関与し、対支同志会主催の「英国排撃市民大会」でイギリスの東洋政策を批判する演説を行いました。太平洋戦争中は、大日本言論報国会の専務理事として国粋主義思想の普及に尽力しました。

戦後の影響と逮捕

1945年11月19日、連合国軍によって戦争犯罪人として逮捕され、巣鴨拘置所に拘禁されました。長年にわたり秘密団体への参加が疑われ、A級戦犯容疑者として扱われました。その後、公職追放の措置も受けました。

栄典と学術的成果

彼は1904年に正八位を授与されています。鹿子木はまた、慶應義塾大学の山岳部を創設し、1918年には日本人として初めてヒマラヤに登山しました。この冒険は『ヒマラヤ行』という著作にまとめられ、今日でも日本の登山文学の古典として評価されています。彼の山岳部からは、槇有恒や三田幸夫などの著名な登山家が輩出されています。さらに、彼は東京帝国大学時代に山岳スキー部の設立にも寄与しました。

家族と著作

鹿子木員信は妻コルネリアと結婚しましたが、後に離婚しています。息子の健日子は、1936年のベルリンオリンピックに出場したバスケットボール選手でもありました。彼の著作には、『ガンヂと真理の把持』などの共著や翻訳が含まれています。

結論

鹿子木員信は多岐にわたる業績を残し、日本の哲学界や教育界において大きな影響を与えました。彼の哲学的探求や社会への関与、そして登山に対する情熱は、今なお多くの人々に尊敬されています。彼の業績は、彼自身の人生の深い思索を反映しており、今日の私たちにとっても示唆に富んだ内容であると言えるでしょう。

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