麻羅観音

麻羅観音：子孫繁栄と大内氏の哀史を秘めた聖地

山口県長門市俵山温泉にひっそりと佇む麻羅観音は、一風変わったご利益で知られる寺院です。子孫繁栄、精力増強、良縁、恋愛成就、夫婦円満など、人々の切実な願いを受け止めています。

境内に並ぶ陰茎の石像

俵山温泉街から少し離れた場所に位置する麻羅観音。小さな祠の周囲には、無数の陰茎の石像が並んでいます。これらの石像は、参拝者が願いを込めて奉納したもので、中には高さ1メートルを超えるものも。願い事を唱えながら石像の亀頭を撫でると、よりご利益が増すと伝えられています。

子宝祈願や安産を願う人はもちろん、夜尿症や性病に悩む人々も訪れるという麻羅観音。願いが書き込まれた陶器製の男根像も多数奉納されており、その様子は圧巻です。地元の人々によって大切に管理されており、交代で清掃や整備が行われています。

麻羅観音祭と大内氏の哀歌

毎年5月には「麻羅観音祭」が盛大に執り行われます。長門市長や地元関係者も参列し、バザーやもちまきなども開催され、多くの人々で賑わいます。また、俵山温泉の旅館経営者によって作られた「大内哀史――麻羅観音の唄」というレコードも存在し、祭りではこの曲に合わせて踊りが奉納されます。歌詞は、大内歓寿丸の魂を慰める哀愁に満ちた内容だと言われています。

大内氏の悲劇と麻羅観音の由来

麻羅観音は、戦国時代の悲劇的な出来事に深く関わっています。1551年、大内義隆は家臣の陶晴賢の謀反により自害。義隆の末子である大内歓寿丸は、難を逃れて山中に隠れていましたが、翌年、陶の兵に捕らえられ、兄と共に命を落としました。当時5歳だった歓寿丸は、男児である証拠として陰茎を切断されたと伝えられています。

この悲劇を悼んだ人々が、歓寿丸の霊を慰めるために観音堂を建立。その後、子宝祈願や健康増進の場として信仰を集めるようになり、現在に至ります。

アクセス

俵山温泉街から北へ徒歩約1キロメートル
JR美祢線「長門湯本駅」からバスで約20分、「俵山病院前」下車、徒歩約15分。またはタクシーで約20分
中国自動車道「美祢インターチェンジ」から約60分、県道281号線沿い

駐車場：15台

その他

本尊は男根のような頭をした観音像
願いを書き込んで奉納する陶器製の男根像は、俵山温泉街で販売
ウォーキングイベントやサイクリングイベントのコースにも選ばれています
* 類似の男根信仰の宗教施設として、宇和島の多賀神宮、和歌山県白浜の歓喜神社、愛知県小牧市の田縣神社などが知られています。

麻羅観音は、大内氏の哀しい歴史と、人々の願いが込められた特別な場所です。俵山温泉を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

もう一度検索