俵山温泉

俵山温泉

俵山温泉は、山口県長門市にある歴史ある温泉地で、その泉質は古くから湯治に利用されてきました。県内でも有数の「防長四湯」の一つに数えられ、特に神経痛やリウマチに効果があると評判です。1886年には「湯町鉱泉」として紹介されており、その歴史の深さがうかがえます。

泉質

俵山温泉の泉質はアルカリ性単純温泉で、主な源泉である「町の湯泉」と「川の湯泉」はpH9.9と高いアルカリ性を示します。源泉温度も41℃と高温で、県内でも珍しい特徴を持っています。1922年の資料には、これらの源泉に効能の違いがあると記載されています。湧き出る温泉は自然に自噴しており、汲み上げられることなく利用されているのが特徴です。

温泉街には16軒の旅館がありますが、内湯を持つのは1軒のみで、地元の人々や観光客は共同浴場である「白猿の湯」と「町の湯」を利用します。これらの共同浴場では、加水なしの源泉かけ流しで温泉を楽しむことができます。「白猿の湯」の名前は、薬師如来の化身である白い猿が温泉を発見したという伝説に由来します。かつては「川の湯」という共同浴場もありましたが、老朽化のため2008年に閉鎖されました。

温泉研究家の松田忠徳氏は、俵山温泉の泉質の良さを高く評価しており、自著で「西の横綱」と称えています。また、湯治客を対象とした実証実験では、俵山温泉の入浴が美容やアンチエイジングに効果がある可能性も示唆されています。ただし、温泉の公式ホームページで紹介されている「溶存水素濃度が高い」という点については、日本温泉総合研究所から誤りであると指摘されています。

温泉街

俵山温泉の温泉街は、木屋川上流の静かな山間に位置しています。かつては40軒近くあった旅館も、現在では16軒まで減少していますが、大型ホテルが立ち並ぶ長門湯本温泉とは異なり、小規模な日本家屋の旅館が中心です。松田忠徳氏は、この温泉街を「日本人の温泉の原風景」と絶賛し、湯治場としての風情と機能が保たれている点を高く評価しています。

宿泊者は外湯に通うという昔ながらの湯治スタイルが今も残っており、大きな温泉地では珍しい形態です。「町の湯」は480円、「白猿の湯」は850円で利用でき、それぞれ異なる源泉を使用しています。旅館の中では、冨士屋旅館が唯一自家源泉を持ち、「日本温泉遺産を守る会」から温泉遺産として認定されています。また、松屋旅館は松田忠徳氏の「お薦めの宿＆共同湯200選」に選ばれています。

歴史

俵山温泉の開湯伝説は、室町時代の応永年間まで遡ります。猟師が傷ついた白猿が温泉で傷を癒しているのを発見し、その白猿が薬師如来の化身であったという話が伝えられています。また、平安時代の916年にも開湯伝説があり、熊野神社の縁起として伝えられています。

江戸時代には、長州藩や長府藩の藩主も湯治に訪れました。文豪の田山花袋も俵山温泉を「私の心を誘ふ温泉」と紹介しています。1955年には、国民保養[[温泉地]]および国民保健温泉地に指定され、その価値が認められました。

お土産

俵山温泉の名物として、「三猿まんじゅう」が有名です。温泉の開湯伝説にちなみ、「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿をかたどった焼饅頭で、1951年から販売されています。また、温泉街から北に1kmの場所にある麻羅観音にちなんで、男根像が販売されており、願い事を書いて奉納すると叶うと言われています。

アクセス

鉄道を利用する場合、JR美祢線長門湯本駅またはJR山陰本線・美祢線長門市駅で下車し、サンデン交通バスに乗り換えます。長門湯本駅から約25分、長門市駅からは約35分で到着します。また、JR山陽本線小月駅または下関駅からは、サンデン交通バスで約70分（小月駅）または約110分（下関駅）でアクセス可能です。

車の場合は、中国道小月ICまたは美祢ICから、それぞれ約30分で到着します。

俵山温泉は、歴史と自然に囲まれた、心身ともに癒される温泉地です。

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