黄 (春秋)

黄（こう）とは

黄は、古代中国の殷・周時代に存在した諸侯国の一つで、爵位は子爵でした。国君は嬴姓を名乗り、その国民は東夷の黄夷の末裔であるとされています。殷の時代に、黄夷が淮水のほとりに建国したと伝えられています。周が殷を滅ぼすと、黄は周に帰服し、その領土を安堵されました。出土した青銅器などから、黄は周の有力諸侯である姫姓の曾などと婚姻関係を結んでいたことがわかっています。

先[[秦]]時代の黄

先[[秦]]時代には、複数の黄が存在していました。現在の山西省にも臺駘（たいだい）の末裔とされる黄が存在していましたが、こちらは晋によって滅ぼされています。本記事で解説する黄は、現在の河南省潢川県隆古郷にあったとされる国です。

黄の歴史

黄の歴史は、『竹書紀年』に「（夏）后相即位、二年、征黄夷」とあるように、夏王朝の時代にまで遡る記述が見られます。しかし、詳細な記録は『春秋左氏伝』に多く見られ、桓公八年（紀元前704年）の記事が初出となります。

楚との対立

当時、楚は勢力を拡大しており、諸侯を楚の地に集めて会盟を行おうとしましたが、黄と随の二国はこれに参加しませんでした。その結果、漢水の北にあった随は楚に討伐されてしまいましたが、淮水にあった黄は地理的に距離があったため、討伐は免れたものの楚から叱責を受けました。

紀元前675年、楚の文王は黄を討伐します。淮水の中・上流にまで勢力を拡大した楚に対抗するため、黄は強国である斉に頼る戦略を取りました。紀元前658年には、宋で行われた対楚のための会盟に斉、宋、江、黄の四国が参加。翌年には陽穀で再び会盟を行っています。

紀元前655年秋には、黄と江の二国は陳を討伐しています。この頃、斉は覇者の地位を確立しており、淮域の諸国は楚に反旗を翻し斉につきました。楚も覇権を唱えるために北上政策を取り、黄の姻戚関係にあった小国である弦を滅ぼしました。弦の君主である弦子は黄に逃げ込みました。

紀元前649年冬、楚は黄が楚に貢物を納めないことを理由に軍勢を出し、黄を攻撃しました。そして、紀元前648年夏、黄は楚によって滅亡させられました。

黄国故城

黄国故城は、現在の河南省信陽市潢川県北西6キロメートルの隆古郷に位置しています。城址は長方形で、周囲は約6700メートル、城壁は残っている部分で高さ5～7メートルあり、西周から春秋時代にかけて造られたと考えられています。

黄国故城の南西約20キロメートルの光山県宝相寺一帯には、黄の貴族の墓地が発見されています。1983年には黄君孟夫婦の墓、1988年には黄季佗の父の墓が発掘されました。黄の領域内である羅山、光山、潢川などの地からは、春秋時代早期のものと見られる貴重な黄国の文物が多数出土しています。

これらの発掘調査により、黄の歴史や文化、当時の生活様式が明らかになりつつあります。

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