黄丹袍

黄丹袍（おうにのほう）

黄丹袍とは、皇太子もしくは皇嗣が儀式の際に着用する束帯装束の袍のことです。その名前は、梔子（くちなし）と紅花（べにばな）で染めた色名である黄丹に由来します。

沿革

天皇が着用する黄櫨染御袍（こうろぜんのごほう）は、中国の赭黄袍（しゃこうほう）を起源として平安時代初期に導入されました。一方、黄丹色の日本での起源はさらに古く、奈良時代の『養老律令』の「衣服令」において、皇太子の礼服（らいふく）と朝服の「衣」の色として規定されています。これは、それ以前の朱華色（はねずいろ）の系統を引くものと考えられています。

唐代初期には皇太子の常服（日本の朝服の祖形）の規定がありませんでしたが、後には紫袍が使用されるようになったため（『新唐書』車服志）、少なくとも黄丹は唐の模倣ではないことがわかります。黄丹の色は昇る旭日を象徴しており、皇太子以外は使用できない禁色でした。

平安時代前期には、皇太子の礼服は赤色の九章服（きゅうしょうふく）になりましたが、朝服においてはその後も使用され続けました。文様としては、鴛鴦丸（えんおうまる）が使われることが一般的になりました。

室町時代に入り、立太子が中絶し、皇位継承者が親王のまま即位することが一般化すると、黄丹袍も一時的に使用されなくなりました。しかし、江戸時代に朝仁親王（東山天皇）の立太子以降、皇太子の制度が復活すると、当初は赤色袍と称して赤茶色の袍が用いられることがあったようです。この皇太子の「赤色袍」が黄丹の異名であったのか、あるいは別のものだったのかは、現在のところ不明です。

令和時代に入り、皇嗣である秋篠宮文仁親王が儀式が行われる際に黄丹袍を着用しています。

形状

朝仁親王以来、黄丹袍の紋は、花形の枠に下向きになった鴛鴦（おしどり）一羽を収めたものが定型化され、現在まで変わっていません。（字義上は鴛がオスで鴦がメスですが、ここでは雄のみが用いられています。）

近世後期の規定では、衣紋道の山科流・高倉流ともに、冬の場合、元服後の縫腋袍（ほうえきのほう）の仕立てのときは裏を黄平絹、元服前の闕腋袍（けってきのほう）の仕立てのときは裏を黄丹平絹の表裏同色とします。紋の配置は升目状に縦横一列に配し、通常の装束地のように一段ごとに紋の位置をずらすことはありません。これは黄櫨染も同様です。

また闕腋のときは、未成年であるため、鴛鴦丸が間を詰めて織られます（一般的に装束では、若年ほど紋が小さく密になります）。冬の生地は、未成年の闕腋であっても浮織にはせず、三枚綾地に六枚綾で紋をあらわしたいわゆる固地綾（かたじあや）を用い、夏は穀（禾→系）という紗（しゃ）で裏をつけません。

近代においてもほぼこの制度を継承していますが、紋の配置については、闕腋のときも近世ほど間を詰めていません。また、裕仁親王（昭和天皇）の立太子に先立ち、「鴛鴦」といいながら一羽であることが問題視され、二羽を組み合わせた丸文及び鴛鴦丸を鶴丸に代える案が生じましたが、京都在住華族で、衣紋講習会の講師であった山科言綏らに諮問した結果、取りやめになりました。

関連項目

麹塵袍（きくじんのほう）

脚注

外部リンク

有職文化研究所
* 風俗博物館

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