龍安寺 (美濃加茂市)

龍安寺の歴史

龍安寺（りゅうあんじ）は、岐阜県美濃加茂市井深に位置する臨済宗妙心寺派の寺院です。山号を碧雲山と称します。この寺院は、地域の歴史と深く結びついており、特に土岐氏との関係が深いことで知られています。龍安寺は、近隣の正眼寺をはじめ、禅徳寺、卜雲寺、放光寺とともに「四隣寺」と呼ばれ、地域における重要な寺院群の一翼を担っていました。

創建は1371年（建徳2年）に遡ります。美濃国の守護であった土岐康行が、海禅師を開山として迎え、碧雲山永安寺として建立されました。土岐康行の死後、その墓が設けられたと伝えられていますが、現在では所在は不明です。土岐氏の没落とともに寺は一時衰退しましたが、17世紀後半の延宝年間（1673年～1681年）初頭に閩嶺永晋によって再興されました。この際、宗派が臨済宗大徳寺派から妙心寺派に改められ、寺号も龍安寺と改称されました。

1730年（享保15年）には、卜雲寺の寺領から掘り出された鴻鐘に「大日本美濃州武儀郡揖深荘碧雲山永安禅寺鴻鐘」という銘文が見つかりました。また、「至徳元年甲子季秋朔丙申晦日乙丑鋳之」や「大檀那源朝臣義行」という文字も刻まれており、この義行は寺領を寄進した土岐康行であることが判明しました。この梵鐘は現在も鐘楼門に吊り下げられており、寺の歴史を今に伝えています。

境内の様子

龍安寺の境内には、天満宮が祀られています。また、三十三観音菩薩と子安観音菩薩も安置されており、参拝者の信仰を集めています。これらの観音像は、地域の人々の心の拠り所として大切にされています。

薬師堂について

龍安寺の薬師堂は、字井上のミゾホラの西、河原田のアタンビラの南、愛宕山の中腹に位置しています。この地は、元々上切庄屋であった井上半七郎が、正眼寺の見桃主塔列岫に閑居の地として寄進したものでした。その後、1747年（延享4年）に上切庄屋の井上多左衛門が薬師・観音堂を建立しました。一時期、卜雲寺の寺領から掘り出された鴻鐘がここに懸けられていましたが、後に龍安寺の管理下となりました。龍安寺は、この地を含照庵として尼僧の庵主を住まわせることもありましたが、その後無住となり、現在は龍安寺の手を離れ、村方の中切組に属しています。毎年9月1日の盂蘭盆の日には、この薬師堂で中切組による施餓鬼が行われ、龍安寺から僧が招かれて読経が行われています。

文化財

龍安寺には、歴史的価値の高い文化財が複数存在します。特に、梵鐘は室町時代前期の希少なものであるとして、1962年（昭和37年）に岐阜県の文化財に指定されました。また、鐘楼門自体も建立から300年以上を経た価値のあるものとして、美濃加茂市の文化財に指定されています。これらの文化財は、龍安寺の歴史と地域の文化を今に伝える貴重な遺産です。

龍安寺は、その歴史的な背景と美しい自然に囲まれた静かな佇まいから、訪れる人々に安らぎを与えています。この寺院は、地域の人々にとって、信仰の場であると同時に、歴史と文化を伝える大切な存在です。

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