正眼寺

正眼寺（しょうげんじ）は、岐阜県美濃加茂市伊深町にある臨済宗妙心寺派の寺院です。山号を妙法山と称し、深い歴史と文化を持つ寺院として知られています。

歴史

正眼寺の歴史は、鎌倉時代末期の元徳2年（1330年）頃に、臨済宗妙心寺派の開祖である関山慧玄が諸国行脚の途中にこの地を訪れ、その静かな佇まいを気に入り、9年間隠棲したことに始まります。関山慧玄はその後、花園上皇から寄進された花園の離宮を寺として妙心寺を開山しました。

江戸時代初期の寛永年間には、陽岳寺の錐翁慧勤が関山慧玄が隠棲した地に草庵を構え、約1年間滞在しました。この期間中、彼の名声を慕って多くの僧俗が訪れたと伝えられています。

その後、この地には草庵を結ぶ者が現れましたが、いずれも飢えと寒さに耐えきれずに去って行きました。しかし、万治元年（1658年）に、豊前中津の僧である太極唯一が関山慧玄の遺蹟を訪れ、この地に寺を建立することを決意しました。彼は禅徳寺の玄興と協力し、この地を知行所としていた旗本である佐藤吉次に寺の建立を願い出ました。

同年、太極唯一と玄興はまず茅葺の草庵を建て、初祖山圓成寺として妙心寺の末寺としました。さらに太極唯一は関山慧玄の木造を制作し、諸国を巡って伽藍建立の資金を集めました。

寛文9年（1669年）には、佐藤吉次が寺の敷地と用材を寄進し、妙心寺は「美濃伊深山」を寺の境内として受け取り、山林田畑を買い入れました。これにより寺の建設が本格的に始まり、妙法山正眼寺と改称されました。寛文11年（1671年）には塔頭の一つである徳光庵が完成し、太極唯一はここに隠居し、正眼寺を妙心寺に献上しました。翌年には、見桃庵、大亀庵、不二庵が完成し、四つの塔頭が揃いました。寛文13年（1673年）には大亀庵の慈峯によって洪鐘が鋳造され、正眼寺の堂宇が整えられていきました。

延宝3年（1675年）に大檀那である佐藤吉次が亡くなると、その嫡男である佐藤続成は、遺言に従って吉次の遺骸を正眼寺の裏山に葬りました。その後、続成は父の菩提のために、日光輪王寺の大猷院で徳川家光の霊廟を建てた際に残った用材を使い、吉次の霊屋を建立しました。この霊屋は非常に堅牢で、2年の歳月をかけて完成しました。また、附属の建造物として了心庵と宝蔵も建てられました。正眼寺は、「佐藤吉次公坐像」を所蔵しています。この建設には村の農民が動員され、その賦役が天和義民事件の要因の一つとなりました。

同年、太極唯一は正眼寺の完成を見届けて、南泉寺に隠居しました。その後、正眼寺の運営は妙心寺と同様に、四庵の上に輪番住職を置く形となり、龍泉、東海、霊雲、聖澤の四派の前堂職が交互に住持を務めました。第一世を太極唯一とし、宝暦6年（1756年）には石禅が二世として入寺しました。

弘化4年（1847年）に雪潭紹璞が住持となると、輪住制を独住制に改め、鐘楼を修復し、僧堂を設置しました。これにより、正眼寺は妙心寺の命により修行僧の専門道場となりました。雪潭紹璞は「雷雪潭」と呼ばれ、その厳格な指導から「鬼叢林」と称されるほどでした。安政6年（1859年）には、関山慧玄の五百年大遠諱法要を執り行いました。その後、雪潭紹璞は長良の眞福寺に隠居し、孝明天皇より真如明覚禅師の名号を賜りました。

明治42年（1909年）には、関山慧玄の五百五十年大遠諱にあたり、無相大師の諡号が贈られ、洞宗聡大によって伽藍が再興されました。昭和30年（1955年）には、逸外実大が関山慧玄の六百年大遠諱を厳修し、その記念として正眼短期大学を創設しました。また、プロ野球選手の川上哲治や星野仙一が修行に訪れたことでも知られています。

境内

参道を進むと、右側に「勅使巌」があります。これは、花山上皇の勅使がこの岩の前で慧玄に感銘を受けたことに由来します。石段を登り山門をくぐると、正面に本堂があります。本堂の前には菩提樹とシダレザクラがあり、旧本堂は「毒草窟」と呼ばれ、薬師如来像が安置されています。本堂左手の山中には佐藤吉次の墓と霊屋があります。宝蔵には佐藤家縁の甲冑や古文書が納められています。

文化財

美濃加茂市指定文化財
佐藤家甲冑
美濃加茂市指定天然記念物
しだれ桜

交通手段

JR高山本線・太多線美濃太田駅から車で約15分
名鉄広見線日本ライン今渡駅から車で約25分

関連書籍

『正眼寺無隠精禅師の芳躅』梶浦逸外 / 著（正眼寺、1942年）
『妙法山正眼禅寺誌』正眼寺誌編纂委員会 / 編（正眼寺、1954年）
『碧巌録と正眼寺庭園～岐阜県美濃加茂市伊深町寺洞」』澤田天瑞 / 著（中部庭園同好会、2003年）
『岐阜県百寺』正眼寺　p144～p145　郷土出版社　1987年
『美濃加茂市史　通史編』　第五章　中世美濃加茂の宗教と美術　三　妙心寺派寺院　関山と正眼寺　p288　美濃加茂市　1980年
『美濃加茂市史　通史編』　第七章　美濃加茂地方の宗教と寺社　第二節　仏教と寺社　一　妙心寺派の伸長と正眼寺の創建　p561～p564　美濃加茂市　1980年
『美濃加茂市史　通史編』　第七章　美濃加茂地方の宗教と寺社　第二節　仏教と寺社　三　白隠と雪潭　白隠禅師の正眼寺入山　p568～p569　美濃加茂市　1980年
『美濃加茂市史　民俗編』　第一二章　仏寺と法会　第七節　正眼寺　p409～p414　美濃加茂市　1978年
『美濃国加茂郡誌』　第七章　宗教　第二節　寺院　【伊深正眼寺】　p771～p773　岐阜県加茂郡役所　大正10年

関連リンク

正眼寺
正眼寺（美濃加茂市）
正眼寺
* 正眼寺・正眼僧堂]　　妙法山正眼禅寺[臨済宗妙心寺派妙心寺奥の院

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