1-ブタノール

1-ブタノールの概要

1-ブタノール（英: 1-butanol）は、化学式C4H9OHを持つ直鎖状の第一級アルコールです。一般にブタノールと呼ばれる場合、1-ブタノールを指します。この物質は、異性体として2-ブタノールやイソブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどを持っています。1-ブタノールは自然界では、糖類がアルコール発酵する過程で生成され、多くの食品や飲料に自然に含まれています。

用途

1-ブタノールは、アメリカにおいて香味料として許可されており、バターやクリーム、ラム酒、ウイスキー、アイスクリーム、焼き菓子などに広く利用されています。加えて、工業用の中間体としての需要が特に高く、酢酸ブチルの製造に不可欠な成分となっています。1997年のデータによると、アメリカの1-ブタノールの生産量は784,000トンにのぼり、西欧で575,000トン、日本で225,000トンが生産されています。

製造方法

オキソ法

1950年代以降、1-ブタノールの大半はオキソ法によって生産されています。このプロセスでは、プロピレンをヒドロホルミル化し、ブチルアルデヒドを生成し、その後水素化することで1-ブタノールが得られます。この際、コバルトやロジウムを触媒として使用します。

レッペ反応

1-ブタノールは、プロピレン、一酸化炭素、及び水を用いるレッペ反応によっても合成可能です。

バイオマス発酵

また、バクテリアによるバイオマスの発酵過程でも生産されます。過去には、クロストリジウム・アセトブチリクムが工業的なブタノール生産に使用されていましたが、最近の研究では他の微生物も同様の生産能力を持つことが示されています。

使用用途

1-ブタノールは主にワニスの製造に使われており、全体の使用量の85%を占めています。さらには、ニトロセルロースの溶剤や可塑剤の基材としても広く利用されています。ブタノール誘導体である酢酸ブチルもさまざまな溶剤として使われています。

バイオ燃料

最近では、1-ブタノールが軽油やガソリンの代替燃料としても期待されています。特に、エネルギー供給量がガソリンに近く、既存のエンジンに簡単に適応できる点が注目されています。また、ブタノールを軽油に添加することで煤煙の排出を削減できる可能性もあります。

天然での生成

1-ブタノールは、ビールやワインなどのアルコール飲料の発酵副産物として自然に生成されています。他には、加熱した牛乳や特定の植物からも発見されています。フーゼル油の成分の一つとしても知られていますが、濃度は低く変動があります。

健康と安全

1-ブタノールは急性毒性が比較的低く、経口摂取によるLD50は790～4,360 mg/kgです。皮膚への影響はあるものの、重度の中毒や損傷は少ないとされ、呼吸器系への影響は高濃度でのみ見られます。引火点は35℃であり、取り扱いに際しては注意が必要です。

1-ブタノールは工業や食品、そしてエネルギー分野で様々な役割を果たしており、今後の可能性に注目が集まっています。

もう一度検索