100歳の少年と12通の手紙

『100歳の少年と12通の手紙』について

『100歳の少年と12通の手紙』（原題：Oscar et la Dame rose）は、2009年に製作されたフランス、ベルギー、カナダによる合作ドラマ映画です。

原作は、フランスの著名な劇作家エリック＝エマニュエル・シュミットによるベストセラー小説『神さまとお話しした12通の手紙』。本作では、原作者であるシュミット自身がメガホンを取り、脚本も手掛けるという形で映像化が実現しました。主演はミシェル・ラロックとアミールが務めています。

物語の中心となるのは、白血病のために入院している10歳の少年、オスカーです。自分自身の病状や先について、周囲の大人たちが本当のことを何も話してくれず、腫れ物に触るように接することに、オスカーは強い不信感を抱いています。特に、主治医から骨髄移植の失敗と短い余命を知らされ、ショックのあまり面会を避けるようになった両親の姿を盗み見てしまったことで、彼の大人への不信感は一層深まり、心を閉ざしてしまいます。

そんなある日、オスカーは病院にピザを届けに来た女性、ローズと出会います。彼女は言葉遣いは荒いものの、嘘偽りのない率直な物言いをする人物で、オスカーは彼女に惹かれます。オスカーが誰とも話そうとしない状況を見た主治医デュッセルドルフ医師は、オスカーが「ローズとなら話してもいい」と答えたのを受け、ローズにオスカーの話し相手になってほしいと強引に頼みます。

最初は気乗りしなかったローズですが、オスカーの状況と彼の大人への不信感を知るにつけ、彼のために何かをしたいという思いに至ります。そして、彼女はオスカーに一つの提案をします。それは、残された大晦日までの12日間を、一日を10年と見立てて過ごし、毎日神様に手紙を書くというものでした。神様の存在を信じないオスカーでしたが、ローズに諭され、手紙を書き始めます。ローズはその手紙を預かり、神様へ届けるとして風船で空に飛ばす一方、密かにデュッセルドルフ医師にもコピーを渡して、オスカーの心情を共有します。

ローズの助けを借りながら、オスカーは一日一日を10歳ずつ年を重ねていきます。手紙の中で、彼は10代で同じ病棟の少女ペギーに恋をし、20代で結婚、30代でローズや他の病棟の子どもたちを養子に迎え、40代で夫婦間の危機を乗り越えるなど、まるで駆け足で人生を追体験するかのように、普通の男性が経験するであろう様々な出来事を疑似的に経験していきます。クリスマスの夜には、自分だけでなく両親も「いずれ死を迎える」という当たり前の事実に改めて気づき、両親と心を通わせることで和解を果たします。

人生を濃密に生きるオスカーでしたが、病は確実に進行します。夢の中で神の存在を感じたオスカーは、その感動を最後の手紙に綴ります。そして、約束通り大晦日、オスカーは穏やかに息を引き取ります。

オスカーの死後、彼の両親はローズの家にオスカーの遺品を届けます。その箱には、短いながらもローズとオスカーの温かい交流の記憶が詰まっていました。「死」を極度に恐れ、これまでの人生で一度も葬儀に参列したことがなかったローズは、生まれて初めて、遠くからですがオスカーの葬儀を見守ります。そして、自らの無力感に苛まれるデュッセルドルフ医師を優しく励まします。冬が終わり春が訪れる頃、ローズは病院の前に移動ピザ屋を開き、そこで病棟の子どもたちに温かいピザを振る舞う姿が描かれます。

登場人物

ローズ - ミシェル・ラロック
オスカー - アミール
デュッセルドルフ医師 - マックス・フォン・シドー
ゴメット婦長 - アミラ・カサール
オスカーの母親 - コンスタンス・ドレ
オスカーの父親 - ジェローム・キルシャー
* リリー - ミレーヌ・ドモンジョ（ローズの母）

日本での朗読劇化

原作小説は、2012年にアトリエ・ダンカンプロデュースにより、音楽とダンスを伴う朗読劇としても上演されました。『音楽×ダンス×朗読 観る朗読劇「100歳の少年と12通の手紙」』と題され、同年9月に初演、12月にアンコール公演が、いずれも東京グローブ座で行われました。日替わりの豪華キャストによる朗読と、音楽、ダンスが融合した、新たな表現形式として注目を集めました。

朗読劇には、多田直人、柴田理恵、小西遼生、杏子、古川雄大、萩野志保子、成海璃子、江波杏子、新納慎也、彩吹真央、宮野真守、萬田久子、竹財輝之助、秋野暢子、山崎育三郎、涼風真世、川平慈英、香寿たつき、松岡充、木の実ナナ、安倍なつみ、木村多江、池松壮亮、南果歩、小野賢章、阿知波悟美、佐藤永典、村井良大、杜けあきといった多様な俳優やアナウンサーが出演しました。

スタッフには、原作：エリック=エマニュエル・シュミット、訳：阪田由美子、演出：鈴木勝秀、音楽：前嶋康明、振付：平山素子などが名を連ねています。

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