17.5mmフィルム

17.5mmフィルム：黎明期の小型映画規格

17.5mmフィルムは、映画用フィルムの規格の一つで、35mmフィルムのちょうど半分の幅を持つことが特徴です。19世紀末に登場し、初期の小型映画システムに採用されました。

17.5mmフィルムの誕生と初期の展開

17.5mmフィルムは、1898年にイギリスのバート・エイカーズによって開発された「バータック」に初めて採用されました。これは世界初の小型映画規格であり、家庭用映画の撮影、複製、映写を可能にする画期的なシステムでした。バータックのフィルムは、1フレームあたり2個のパーフォレーション穴を持つ片側穿孔タイプでした。

その後、17.5mmフィルムは様々なメーカーによって採用され、多様な規格が登場しました。以下に主なものを紹介します。

バイオカム (1899年): アルフレッド・ダーリングとアルフレッド・レンチによって開発された撮影・複製・映写兼用のカメラです。フィルムは1フレームあたり1個のフレーム間穿孔タイプでした。
ラ・ペティート (1900年): W・C・ヒューズが発表したカメラで、フィルムはバイオカムと同様のフレーム間穿孔タイプでした。
キノ (1902年): ドイツのエルネマン社が開発した撮影・複製・映写兼用のカメラです。フィルムはフレーム間穿孔タイプでした。
イコノグラフ (1905年): アメリカのイコノグラフ社が大量生産したカメラで、フィルムはキノのものと類似していました。
デュオスコープ (1912年): ロンドンで発表されたカメラで、フィルムは1フレームあたり2個のフレーム間穿孔タイプでした。
ムーヴェット (1917年): コダックが発表したカメラで、フィルムは1フレームあたり2個の両側穿孔タイプでした。
クルー (1920年): オーストリアで発表されたカメラで、フィルムは1フレームあたり2個のフレーム間穿孔タイプでした。

パテ・ルーラルの登場

1926年、フランスのパテ社は、アマチュア映画用の小型映画規格「パテ・ルーラル」を発表しました。この規格は、1フレームあたり1個の両側穿孔タイプのフィルムを使用し、17.5mmフィルムの規格の中でも比較的普及しました。1932年には光学サウンドトラックを導入してトーキー化も試みられましたが、コダックが16mmフィルムや8mmフィルムを普及させたため、広く普及するには至りませんでした。

写真用フィルムとしての利用

1937年、日本の美篶商会は、17.5mm幅のフィルムを写真用に導入し、超小型写真機「ミゼット」とともに新規格「ミゼットフィルム」を発表しました。このフィルムは、裏紙付き・無孔のロールフィルムで、画面サイズは14×14mm判の正方形、10枚撮りでした。ミゼットフィルムは、第二次世界大戦後しばらくの間、日本の超小型写真のスタンダード規格として利用されました。

17.5mmフィルムの歴史的意義

17.5mmフィルムは、映画と写真の両分野において、小型化とアマチュア市場の開拓に貢献しました。初期の映画技術の発展において重要な役割を果たし、その後の16mmフィルムや8mmフィルムの普及への道筋をつけたと言えるでしょう。

関連項目

小型映画
パテベビー
9.5mmフィルム
ミゼットフィルム
超小型写真

参考文献

Who's Who of Victorian Cinema: A Worldwide Survey, Stephen Herbert & Luke McKernan, British Film Institute, 1996年10月 ISBN 0851705391
『国産カメラ図鑑』、すぎやまこういち・直井浩明・ジョン・R・ブロック・粟野幹男、スギヤマ工房、改訂版、1985年1月 ISBN 4257031875
* 『昭和10–40年広告にみる国産カメラの歴史』、アサヒカメラ、朝日新聞社、1994年 ISBN 4023303127

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