18世紀の航空
18世紀の航空
18世紀は、人類が長年の夢であった「空を飛ぶ」ことに現実的に挑戦し始めた画期的な時代です。特に後半には、気球技術の急速な発展により、多くの重要な出来事が記録されました。この世紀を通じて行われた様々な実験や構想は、後の航空技術の発展の礎を築くことになります。
世紀の初頭、1709年にはポルトガルのバルトロメウ・デ・グスマンが空中船「パッサローラ」の特許を取得し、熱気球の模型実験に成功したと伝えられています。また、1714年にはスウェーデンのエマヌエル・スヴェーデンボリがノートに飛行機械の設計図を残し、1767年にはドイツのメルヒオール・バウアーが「空中車」を考案するなど、この時期には様々な飛行に関するアイデアや設計が生まれ始めていました。
1780年代に入ると、飛行に関する活動は一層活発化します。1781年にはバーデン大公国の建築家カール・フリードリヒ・メールヴァインが人力オーニソプターでの飛行を試みました。そして、この年代の最も重要な出来事として挙げられるのが、1783年の連続した気球による有人飛行の成功です。まず11月21日には、フランスのモンゴルフィエ兄弟が開発した熱気球に、ピラートル・ド・ロジェとフランソワ・ダルランドの二人が搭乗し、テュイルリー庭園から飛び立って約25分間の飛行に成功しました。これは、動力を持たない航空機による人類初の有人飛行として歴史に刻まれました。そのわずか数週間後の12月1日には、同じくフランスの物理学者ジャック・シャルルと助手のロベールが、水素を充填した気球を用いて有人飛行に成功しています。さらに、12月26日にはルイ＝セバスチャン・ルノルマンがモンペリエの塔から、枠組みのあるパラシュートを使ったジャンプを行い、降下装置の可能性を示しました。
1784年には、気球飛行はさらなる広がりを見せます。フランス人のジャン＝ピエール・ブランシャールはスペインで気球飛行を試みましたが、機体のトラブルで負傷しました。一方、イギリスのジェームズ・タイトラーも熱気球での飛行に成功しています。そして、9月19日には、ジャック・シャルルとジャン＝バティスト・ムーニエが設計し、ロベール兄弟が搭乗した気球「ラ・カロリーヌ」がパリからバーヴリーまで、史上初めて100kmを超える186kmの長距離飛行を6時間40分かけて達成しました。この年には、フランスで気球の飛行実験が科学アカデミーの委員会によって審査・許可される制度が導入され、飛行に関する取り組みが組織化され始めます。また、ジャン＝バティスト・ムーニエは、80人の人力で推進するプロペラを備えた大型飛行船の計画を提案しましたが、これは実現しませんでした。
1785年には、より挑戦的な飛行が行われます。1月には、ジャン＝ピエール・ブランシャールとアメリカのジョン・ジェフリーズが、水素気球を用いてドーヴァー海峡の横断に成功し、国際的な飛行の道を開きました。しかし、同年にはアイルランドのタラモアで、墜落した水素気球が大規模な火災を引き起こし、多数の家屋が焼失するという痛ましい事故も発生し、飛行に伴う危険性も明らかになりました。日本でも、浮田幸吉が滑空飛行に成功したとされる逸話が残されています。
その後の年代も、様々な試みが続きます。1786年6月18日には、フランスのピエール・テステュ＝ブリシが初の夜間の気球飛行を行いました。1787年には、琉球の花火師、飛び安里がオーニソプターで飛行したという伝承があります。1788年には、櫟斎老人の著書『平賀実記』に、平賀源内が長崎で入手した気球を江戸に持ち帰ったという記述が見られます。
1790年代には、飛行技術の応用やさらなる構想が登場します。1791年の林子平の『海国兵談』には、帆を張った軽気球の図が描かれています。1792年には、スペインのセゴビアで、フランスの化学者ジョゼフ・プルーストが熱気球を用いた砲兵の飛行デモンストレーションを行い、気球の軍事利用の可能性を示しました。この可能性はすぐに現実となり、1794年6月2日にはフランス革命軍に公式な航空部隊が編成され、気球「ラントルプレナン」がオーストリア軍との戦闘で砲撃偵察に用いられました。これは世界初の航空部隊による実戦参加となります。また、1793年にはスペインの農夫ディエゴ・マリン・アギレラがグライダーでの滑空を試みたとされ、1797年10月にはアンドレ＝ジャック・ガルヌランが気球からのパラシュート降下を成功させるなど、多様な飛行形態への挑戦が続きました。世紀末の1799年には、イギリスのジョージ・ケーリーが固定翼の原理を着想しており、これは19世紀以降の航空技術の大きな方向性を示すものとなります。
18世紀は、気球という新しい技術によって人類が初めて自らの意思で空中に到達することを可能にし、その実用性や可能性、そして危険性をも探求した時代でした。これらの初期の探求と実験が、やがて飛行船や飛行機といった近代航空機への道を開くことになったのです。
18世紀は、人類が長年の夢であった「空を飛ぶ」ことに現実的に挑戦し始めた画期的な時代です。特に後半には、気球技術の急速な発展により、多くの重要な出来事が記録されました。この世紀を通じて行われた様々な実験や構想は、後の航空技術の発展の礎を築くことになります。
世紀の初頭、1709年にはポルトガルのバルトロメウ・デ・グスマンが空中船「パッサローラ」の特許を取得し、熱気球の模型実験に成功したと伝えられています。また、1714年にはスウェーデンのエマヌエル・スヴェーデンボリがノートに飛行機械の設計図を残し、1767年にはドイツのメルヒオール・バウアーが「空中車」を考案するなど、この時期には様々な飛行に関するアイデアや設計が生まれ始めていました。
1780年代に入ると、飛行に関する活動は一層活発化します。1781年にはバーデン大公国の建築家カール・フリードリヒ・メールヴァインが人力オーニソプターでの飛行を試みました。そして、この年代の最も重要な出来事として挙げられるのが、1783年の連続した気球による有人飛行の成功です。まず11月21日には、フランスのモンゴルフィエ兄弟が開発した熱気球に、ピラートル・ド・ロジェとフランソワ・ダルランドの二人が搭乗し、テュイルリー庭園から飛び立って約25分間の飛行に成功しました。これは、動力を持たない航空機による人類初の有人飛行として歴史に刻まれました。そのわずか数週間後の12月1日には、同じくフランスの物理学者ジャック・シャルルと助手のロベールが、水素を充填した気球を用いて有人飛行に成功しています。さらに、12月26日にはルイ＝セバスチャン・ルノルマンがモンペリエの塔から、枠組みのあるパラシュートを使ったジャンプを行い、降下装置の可能性を示しました。
1784年には、気球飛行はさらなる広がりを見せます。フランス人のジャン＝ピエール・ブランシャールはスペインで気球飛行を試みましたが、機体のトラブルで負傷しました。一方、イギリスのジェームズ・タイトラーも熱気球での飛行に成功しています。そして、9月19日には、ジャック・シャルルとジャン＝バティスト・ムーニエが設計し、ロベール兄弟が搭乗した気球「ラ・カロリーヌ」がパリからバーヴリーまで、史上初めて100kmを超える186kmの長距離飛行を6時間40分かけて達成しました。この年には、フランスで気球の飛行実験が科学アカデミーの委員会によって審査・許可される制度が導入され、飛行に関する取り組みが組織化され始めます。また、ジャン＝バティスト・ムーニエは、80人の人力で推進するプロペラを備えた大型飛行船の計画を提案しましたが、これは実現しませんでした。
1785年には、より挑戦的な飛行が行われます。1月には、ジャン＝ピエール・ブランシャールとアメリカのジョン・ジェフリーズが、水素気球を用いてドーヴァー海峡の横断に成功し、国際的な飛行の道を開きました。しかし、同年にはアイルランドのタラモアで、墜落した水素気球が大規模な火災を引き起こし、多数の家屋が焼失するという痛ましい事故も発生し、飛行に伴う危険性も明らかになりました。日本でも、浮田幸吉が滑空飛行に成功したとされる逸話が残されています。
その後の年代も、様々な試みが続きます。1786年6月18日には、フランスのピエール・テステュ＝ブリシが初の夜間の気球飛行を行いました。1787年には、琉球の花火師、飛び安里がオーニソプターで飛行したという伝承があります。1788年には、櫟斎老人の著書『平賀実記』に、平賀源内が長崎で入手した気球を江戸に持ち帰ったという記述が見られます。
1790年代には、飛行技術の応用やさらなる構想が登場します。1791年の林子平の『海国兵談』には、帆を張った軽気球の図が描かれています。1792年には、スペインのセゴビアで、フランスの化学者ジョゼフ・プルーストが熱気球を用いた砲兵の飛行デモンストレーションを行い、気球の軍事利用の可能性を示しました。この可能性はすぐに現実となり、1794年6月2日にはフランス革命軍に公式な航空部隊が編成され、気球「ラントルプレナン」がオーストリア軍との戦闘で砲撃偵察に用いられました。これは世界初の航空部隊による実戦参加となります。また、1793年にはスペインの農夫ディエゴ・マリン・アギレラがグライダーでの滑空を試みたとされ、1797年10月にはアンドレ＝ジャック・ガルヌランが気球からのパラシュート降下を成功させるなど、多様な飛行形態への挑戦が続きました。世紀末の1799年には、イギリスのジョージ・ケーリーが固定翼の原理を着想しており、これは19世紀以降の航空技術の大きな方向性を示すものとなります。
18世紀は、気球という新しい技術によって人類が初めて自らの意思で空中に到達することを可能にし、その実用性や可能性、そして危険性をも探求した時代でした。これらの初期の探求と実験が、やがて飛行船や飛行機といった近代航空機への道を開くことになったのです。
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