19時女子プロレス

19時女子プロレス（じゅうくじじょしプロレス）は、かつて動画共有サービス「USTREAM」を利用して無料でインターネット生中継されていた女子プロレス番組です。プロレス団体アイスリボンを運営するネオプラスのアイスリボン事業部が主体となっていました。番組名称は、原則として夜19時からの開始を基本としていたことに由来します。

設立から軌跡

この番組は、2010年 5月28日にアイスリボンの新しいブランドとして誕生しました。アイスリボン所属だった帯広さやかが中心となり、代表に就任。設立翌日の5月29日にはレッスル武闘館にて無観客でのプレ旗揚げ戦を実施し、続く6月1日には同じく無観客ながら旗揚げ戦を行いました。ネット配信に特化した形態は当時として画期的であり、多くの注目を集めました。

放送回を重ねるごとに視聴者数は増加し、2010年 7月2日に行われた第15戦、さくらえみ対高橋奈苗戦では、当時の番組史上最高となる2,690人の同時視聴者数を記録しています。この試合は当初、JWP認定無差別級王座戦として計画されていましたが、無観客開催などを理由にJWPからタイトル戦として認められず、ノンタイトル戦として実施されました。この際にはJWP所属選手が立ち会う異例の形となりました。

2011年に入ると、中心人物である帯広さやかが肩の療養のため一時的に番組から離れ、志田光が代表代行を務めます。しかし、帯広はTwitter担当として引き続き番組に関与しました。帯広の長期欠場に伴い、番組内で「19時女子プロレス認定インターネットシングル王座」の創設が提唱され、協賛金を募り王座決定戦が開催されることとなります。東日本大震災発生直後という状況を考慮し、被災地ゆかりの選手4名によるワンデイトーナメント形式で行われ、つくしが初代王者に輝きました。震災に関連した計画停電の影響で、この日の放送は平日にも関わらず昼間に行われたものの、アーカイブ配信により視聴は可能でした。

旗揚げ1周年を迎えた2011年6月1日のアイスリボン興行は、「19時女子プロレス旗揚げ1周年記念」と銘打たれ、観客席を設けつつ19時女子プロレスのスタイルを取り入れて開催され、1,100人を超える同時視聴者を記録しました。同年8月にはニコニコ生放送での同時配信を開始し、活動の幅を広げます。そして、2011年8月26日、19時女子プロレスは運営母体であるアイスリボンに吸収合併され、以後はアイスリボン公式番組の一つとして継続されることとなりました。ニコニコ生放送での配信も、後にアイスリボン公式チャンネルからの配信へ移行しています。

番組内容とルール

レギュラー放送は開始当初週3回程度、30分番組でしたが、会場使用の都合などから原則週1回（金曜）の配信となり、後に1時間番組に拡大されました。番組はMC（帯広、またはアイスリボン所属選手やフリー選手）、実況、解説の3名体制で進行され、時に外部のゲストも招かれました。試合のレフェリーは、その日の放送で試合のないレギュラー参戦選手が担当しました。

試合形式は、番組名にちなんで原則「19分1本勝負」で行われました（開始初期は15分1本勝負）。アイスリボンの基本ルールに準拠していましたが、特長として場外カウントはありませんでした。試合の前には直近のアイスリボン興行のダイジェストが放送されることもあり、試合後には選手インタビューや次回のアイスリボン大会の対戦カード発表などが行われました。ビッグマッチ直前には特集コーナーが組まれるなど、柔軟な編成も行われました。また、第68戦以降は練習生のエキシビションマッチが前座として行われる機会が増え、本戦と合わせて2試合構成となることが多くなりました。

特筆すべき点と影響

19時女子プロレスは、イサミレッスル武闘館を主な拠点としつつも、時折、後楽園ホールでの年越しプロレス（ダークマッチ提供、初の客入れ放送）や、名古屋のスポルティーバアリーナ、大阪プロレスの会場、さらには高校のレスリング場など、様々な場所からも放送を行いました。これらの地方大会や特別企画には観客を入れて開催されるケースもありました。

番組内で生まれたタイトルとして「19時女子プロレス認定インターネットシングル王座」があり、また2012年からは番組内でのトーナメント「19 O'clock girls tournament」が開催されました。このトーナメントの優勝者はインターネットシングル王座への挑戦権を得ることができ、時間切れ引き分け規定や準決勝以降の時間無制限延長ルールなどが導入されました。トーナメント優勝者がことごとく王座を獲得するという結果が続いています。

19時女子プロレスはインターネット配信であることから、環境さえあれば世界中のどこからでも視聴可能でした。これにより、海外のプロレス団体であるプロレスリングEVEとの交流が生まれるなど、国際的な広がりを見せる副産物も生じました。また、元NEO女子プロレスの田村欣子や埼玉プロレスのサバイバル飛田など、他団体関係者からも若手選手に試合機会を与える場としての活用が提言されるなど、業界内での存在感も示しました。

長期間にわたって配信を続けた後、2012年 12月28日の第145戦をもって放送を休止しました。そして、2013年6月22日、アイスリボン大会の会場で正式に放送終了が発表され、今後はアイスリボン公式ニコニコチャンネルを中心とした新しいネット配信体制へ移行することが告知されました。

放送終了から数年を経て、2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大し、通常の観客を入れた興行が困難になった際、アイスリボンは無観客でのネット配信に踏み切りました。この時、過去の19時女子プロレスで培われたインターネット配信のノウハウやフォーマットが活かされることとなり、予期せぬ形でその経験が現代に繋がりました。

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