1910年代の建築

1910年代は、建築の世界において重要な転換期でした。この時代には、多くの建築物が設計コンペを通じて選ばれ、建設されました。コンペは、優れたデザインを発掘し、建築の多様性を促進する上で重要な役割を果たしました。

日本の主要作品

この時期の日本では、西洋の建築様式を取り入れつつ、独自の文化や技術を融合させた建築物が数多く建てられました。以下に、その代表的な例をいくつか挙げます。

大阪市中央公会堂：1911年に実施された懸賞付き建築設計競技で、岡田信一郎の案が1位となり、辰野金吾と片岡安が実施設計を担当しました。この建築物は、ネオ・ルネサンス様式を取り入れた壮麗なデザインが特徴です。
横浜市開港記念会館：1913年に横浜開港50周年を記念して公募設計が行われ、福田重義の案が1等に選ばれました。この建物は、赤レンガと石材を組み合わせた、重厚感のあるデザインが特徴です。
明治神宮宝物殿：1915年のコンペで大森喜一の案が1等となりましたが、実施設計は大江新太郎によって行われました。
日清生命保険株式会社：1916年に建設されたこの建物は、当時の先端技術とデザインが用いられています。
長瀬商店京橋社屋：1916年に建てられたこの建物も、当時の建築技術とデザインを示す重要な例です。
聖徳記念絵画館：1918年の設計競技で小林正紹の案が1位となり、佐野利器の指導のもと、高橋貞太郎と小林政一によって完成されました。この建物は、日本画の展示を考慮した、機能的なデザインが特徴です。
大阪市美術館：1919年から1920年にかけて建設されたこの建物は、美術品の展示に特化した設計がなされています。
議院建築（国会議事堂）：1919年のコンペで渡辺福三の案が1位となりましたが、実施設計では大幅な変更が加えられました。

日本以外の主要作品

海外でも、1910年代には多くの重要な建築物が建設されました。以下に、その代表的な例をいくつか挙げます。

ヘルシンキ中央駅：1904年のコンペでエリエル・サーリネンの案が採用され、この駅は、フィンランドの建築史において重要な位置を占めています。
アウクスブルクのシナゴーグ：1912年のコンペを経て、フリッツ・ランダウアーとハインリヒ・レムペルの案が採用され、1914年から1917年にかけて建設されました。
グルントヴィークス教会：1913年のコンペでイェンセン・クリントの案が選ばれ、その独特なデザインは、デンマークの建築を代表するものです。
ストックホルム南墓地スコーグスシュルコゴーデン：1914年から1915年の国際コンペで、グンナール・アスプルンドとシーグルド・レヴェレンツの共同案が選ばれました。
33リバティー・ストリート（ニューヨーク）：1919年にヨーク＆ソーヤーの案が採用されました。
オーバーハウゼン：設計競技の結果、ペーター・ベーレンスに設計が依頼されました。

コンペ・受賞

この時代には、建築コンペが非常に活発に行われました。以下に、主なコンペとその結果をまとめます。

ヘルシンキ中央駅：1904年に新駅舎のデザイン・コンペが行われ、エリエル・サーリネンの案が採用。
大阪市中央公会堂：1911年に懸賞付き建築設計競技が行われ、岡田信一郎案が1位。
アウクスブルクのシナゴーグ：1912年の建築コンペで、フリッツ・ランダウアーとハインリヒ・レムペルの設計案が採用。
横浜市開港記念会館：1913年に設計案のコンペが実施され、福田重義の図案が1等に当選。
グルントヴィークス教会：1913年にイェンセン・クリントが設計者に決定。
明治神宮宝物殿：1915年に大森喜一の案が1等当選。
聖徳記念絵画館：1918年の建築設計競技で小林正紹の案が1等。
ストックホルム南墓地：1914-1915年にグンナール・アスプルンドとシーグルド・レヴェレンツの共同案が1等。
33リバティー・ストリート：1919年にヨーク＆ソーヤーが当選。

関連事項

1910年代の建築は、以下の要素と密接に関連しています。

日本近代建築史：この時代の建築は、日本の近代建築の発展において重要な位置を占めています。
モダニズム建築：この時代に萌芽したモダニズム建築の潮流は、後の建築に大きな影響を与えました。
歴史主義建築：一方で、歴史的な様式を取り入れた建築も多く建てられました。
* 逓信建築：郵便局や電信局など、社会インフラを担う建築物も多く建設されました。

この時代は、建築デザインが大きく変化し、新しい技術や材料が導入された時期でもありました。コンペを通じて、建築家たちは新しいアイデアを競い合い、建築の可能性を大きく広げました。1910年代の建築は、現代の建築にも影響を与え続けており、その歴史的な価値は非常に高いと言えるでしょう。

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