1911年のメジャーリーグベースボール

1911年のメジャーリーグベースボール：変革と伝説の幕開け

1911年のメジャーリーグベースボール（MLB）は、数々のドラマと新たなヒーローの誕生により、記憶に残るシーズンとなりました。4月12日に開幕し、10月26日に全日程を終えたこの年、ナショナルリーグではニューヨーク・ジャイアンツが6年ぶり5度目のリーグ優勝を果たし、アメリカンリーグではフィラデルフィア・アスレチックスが2年連続2度目のリーグ優勝を飾りました。

ワールドシリーズでは、アスレチックスがジャイアンツを4勝2敗で破り、見事連覇を達成。前回の対戦でジャイアンツのエース、クリスティ・マシューソンに苦杯をなめさせられたアスレチックスが、今回はマシューソンを攻略し、リベンジを果たしました。特に、第2戦、第3戦でホームランを放ち、勝利に貢献したフランク・ベイカーは、「ホームラン・ベイカー」としてその名を轟かせることとなり、以降4年連続で本塁打王に輝きました。

球場を襲った火災とジャイアンツの快進撃

シーズン開幕直後の4月14日、ジャイアンツの本拠地であるポロ・グラウンズが火災に見舞われるというアクシデントが発生。ジャイアンツは、同じニューヨークを本拠地とするハイランダースのヒルトップ・パークを一時的に借りて試合を行うこととなりました。6月28日には、新スタンドが未完成ながらもポロ・グラウンズに戻り、シーズンを乗り切りました。ジャイアンツは8月24日に首位に躍り出ると、その後24試合を20勝4敗という圧倒的な成績で駆け抜け、2位のカブスに7.5ゲーム差をつけてナショナルリーグを制覇。エースのクリスティ・マシューソンに加え、この年はルーブ・マーカードが24勝を挙げる活躍を見せました。

アスレチックスの黄金内野陣とリーグMVP

アメリカン・リーグを制したアスレチックスは、マッキニス（一塁手）、エディ・コリンズ（二塁手）、バリー（遊撃手）、フランク・ベイカー（三塁手）という「10万ドルの内野手」を中心に、強力な打線を誇りました。投手陣もジャック・クームズが28勝、チーフ・ベンダーが17勝を挙げるなど、投打ともに充実した戦力で他を圧倒しました。

シカゴ・カブスのフランク・シュルトは、1910年にリーグ最多の10本塁打を放ち、1911年には21本塁打、107打点に加え、21本の三塁打、30本の二塁打、そして23盗塁を記録する活躍を見せました。これは、二塁打、三塁打、本塁打、盗塁の4部門で20個以上を記録するという、メジャーリーグ史上初の快挙であり、1957年にウィリー・メイズが達成するまで唯一の記録でした。シュルトは、この年のアメリカンリーグのタイ・カッブと共に、リーグの最優秀選手（当時はチャルマーズ賞）の最初の受賞者となりました。

タイ・カッブとシューレス・ジョー・ジャクソンの激しい首位打者争い

クリーブランド・ナップスのシューレス・ジョー・ジャクソンは、プロ入り4年目にして初のフル出場を果たし、打率.408、233安打、41盗塁という素晴らしい成績を記録しました。しかし、この年はタイ・カッブが打率.420という驚異的な数字を叩き出し、ジャクソンは首位打者を逃しました。4割打者でありながら首位打者になれなかった最初のケースとなりました。また、ジャクソンはこの年、新人最多安打記録を樹立していましたが、当時は記録が不正確であり、後の再調査で訂正されていました。この記録は、2001年にイチローが242安打を放つまで、90年間破られることはありませんでした。

サイ・ヤングの引退とグローバー・クリーブランド・アレクサンダーの台頭

サイ・ヤングは、44歳で現役を引退しました。クリーブランド・スパイダースから始まり、セントルイス・パーフェクズ、ボストン・アメリカンズ、クリーブランド・ナップスを経て、1911年のシーズン途中にボストン・ラスラーズに移籍。この年は12勝に終わり、デビュー以来最低の勝ち星で引退となりました。通算511勝は史上最多であり、投球回数7356イニング、完投749も最高記録です。1937年に野球殿堂入りを果たし、1955年に死去。翌1956年には、最優秀投手に贈られるサイ・ヤング賞が設立されました。

一方、この年にはもう一人、グローバー・クリーブランド・アレクサンダーという新人が注目を集めました。1910年にニューヨーク州リーグで29勝を挙げ、1911年にフィラデルフィア・フィリーズに入団。いきなり28勝を挙げ、リーグ最多勝に輝きました。シーズン終盤には、サイ・ヤングとの投げ合いを制し、その名をメジャーリーグに刻みました。

1911年のMLBは、記録と記憶に残る一年となりました。新しいスターの誕生、ベテランの引退、そして数々のドラマが、野球史に新たなページを刻みました。

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