1929年東京市会議員選挙

1929年東京市会議員選挙について

1929年3月16日、東京市会を構成する議員を全面的に改選する選挙が実施されました。この選挙は、単なる議員の入れ替えではなく、東京市の政治史における重要な転換点となる出来事でした。その背景には、市会を揺るがす汚職事件と、普通選挙制の導入という二つの大きな要因がありました。

選挙の背景

1929年の市会選挙は、前代未聞の事態を受けて実施されました。板舟権の保障と京成電鉄の市内乗り入れを巡り、市会で大規模な汚職事件が発生。88名の議員のうち25名が逮捕・勾留されるという異常事態に陥りました。さらに、6名の欠員も重なり、定数の3分の2に満たない議員数では市会を運営することが困難となり、事態を重く見た内務大臣は市会を解散。これにより、新たな議員を選出する選挙が急遽実施されることとなりました。

初の普通選挙

この選挙のもう一つの大きな特徴は、1926年の市制改正によって導入された普通選挙制が適用された、東京市で初めての普通選挙であったという点です。これにより、有権者数は17万7千人余りから約2倍の34万9千人弱に増加しました。この有権者の大幅な増加は、選挙運動にも大きな影響を与えました。戸別訪問やポスターが禁止されたため、選挙演説会が活発に行われ、有権者は直接候補者の訴えを聞く機会を得ました。

選挙結果

投票率は69.6%でした。当選した議員の所属政党は、立憲民政党、立憲政友会、革新党、社会民衆党、日本大衆党、そして中立（無所属）でした。

選挙の意義

この選挙は、汚職事件によって混乱した東京市会を立て直すための重要な一歩でした。また、普通選挙制の導入により、より多くの市民が政治に参加する機会を得たという点でも画期的でした。この選挙は、東京の政治のあり方を変え、その後の政治史に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

まとめ

1929年の東京市会議員選挙は、汚職事件による市会解散と、初の普通選挙制の適用という二つの大きな出来事が重なり、東京市の政治史における重要な転換点となりました。この選挙は、単なる議員の入れ替えではなく、民主主義の発展と、政治の透明化に向けての大きな一歩となったと言えるでしょう。

参考資料

東京都『東京百年史 第五巻』1972年。
東京朝日新聞1929年3月18日付2面「汚れし現勢力を排撃し猛然たる新人の進出：市会総選挙の結果」
* 櫻井良樹「普通選挙期における東京市会議員総選挙の結果について」

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