1933年の日本競馬

1933年（昭和8年）は、日本の競馬界にとって様々な制度や施設に関する議論、そして変化が見られた重要な一年でした。この年は、旧表記による馬齢が一般的に用いられていました。

年明け早々の2月、衆議院予算委員会において、前年11月に中山競馬場で発生した繋駕速歩競走でのジュウライの失格問題が取り上げられました。これを機に、中山競馬倶楽部の会員制度やその閉鎖的な運営、独占的な経営手法に対して厳しい追及が行われ、倶楽部の理事である肥田金一郎氏が答弁に立ちました。この議会での質疑は、後の「競馬の統制改善」に向けた論議の大きな発端となった出来事です。同月には、ジュウライの馬主であった本田義成氏が、競馬の取り締まりや改善に関する質問書を政府に提出するなど、問題提起が続きました。

組織や制度面では、帝国競馬協会も様々な検討を行いました。2月には、各競走における出走可能な馬の年齢を、牡馬は8歳まで、牝馬は6歳までとするという主務省からの提案が、参事会で宿題として持ち帰られることが決議されました。また、農林省畜産局からは、全競馬場で共通の審判制度を導入する必要があるとの指摘が帝国競馬協会に対して行われています。

施設の面では、大きな動きがありました。まず、春の開催を前にした4月3日、京都競馬場の馬見所1号館で火災が発生し、その8割が焼失するという被害に見舞われました。しかし、大林組の手によりわずか2週間という驚異的な速さで修復が完了し、無事に春季競馬を開催することができました。さらに重要な出来事として、5月には新東京競馬場が完成しました。この新しい競馬場は、11月8日に竣工式を迎え、その秋季開催から実際に使用が開始されています。また、中山競馬倶楽部は、競馬場へのアクセス改善のため、専用道路用地を買収し、これを地元の葛飾町に寄付することで、競馬場と国道を結ぶ新しい道路が建設される一助となりました。

地方競馬にも変化がありました。5月2日には地方競馬規則の一部が改正され、入場券の発売額が5万円を超える競馬場に対しては、その収益の一部を馬事に関する施設の維持や整備といった経費に必ず充当しなければならないという規定が加えられました。

夏には、帝国競馬協会の臨時総会が開催されました。この場で、新潟競馬倶楽部の佐藤謙之輔常務理事が、小規模な倶楽部が経営を維持していくことの困難さを訴える場面がありました。これは、当時の競馬倶楽部間における経営状況の格差や課題を示す一幕でした。実際に、10月には中山競馬倶楽部の理事会で、財政的に厳しい状況にあった新潟競馬倶楽部への25,000円の一時借入金の貸し付けが承認され、さらに12月には福島競馬倶楽部に対しても、10年間の年賦で8万円を貸し付けることが承認されています。

思わぬ事件も発生しました。12月2日の早朝、東京競馬場の馬場内に何者かが意図的に釘や鎹を大量にばら撒くという妨害事件が起きました。幸い、関係者の総力によってこれらは全て除去され、その日の競走は滞りなく行われました。また、犯人は当日中に逮捕されています。

この年、競走体系にも変更がありました。春季開催からは、新馬競走を除く「優勝競走」が廃止されています。また、秋季より札幌競馬場では、京都競馬倶楽部から譲り受けた軟式発馬機が導入され、使用が開始されました。

主要な競走としては、4月23日に目黒競馬場で行われた第2回東京優駿大競走があり、カブトヤマが優勝を果たしています。また、10月15日には、競馬実施10周年を記念して、大阪市の城東練兵場で全国馬匹博覧会が開催されました。

1933年は、競馬が社会的に注目され、制度的な課題が表面化しつつも、新たな施設が誕生し、運営方法やルールにも変化が見られた、日本の競馬が近代化へ向かう過程における重要な転換期の一つであったと言えるでしょう。

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