1947年の日本競馬

1947年（昭和22年）の日本競馬界は、第二次世界大戦の終結から2年を経て、未だ戦後の混乱期にありましたが、同時に将来を見据えた様々な改革が推進された画期的な一年となりました。この年は、勝馬投票制度の近代化、歴史ある大競走の復活と改称、そして競馬を巡る組織の動きや今後の制度のあり方が議論されるなど、現代の日本競馬につながる重要な礎が築かれたと言えます。

この年の早い時期には、投票制度に大きな変化がありました。1月には、日本競馬会が主務省の認可を得て、勝馬投票において前売制度を導入しました。さらに5月には連勝式投票券（現在の馬連などに相当）の発売が提案され、6月には農林省令の改正により正式に認められました。この連勝式投票は、7月に札幌競馬場で戦後初めて発売され、その後の主流となる投票方法の第一歩となりました。

また、伝統的な大レースのあり方も変化しました。戦前からの帝室御賞典については、2月に宮内府より下賜が差し控えられたため、春の競走は「平和賞」という名称で代替開催されました。しかし、日本競馬会は諦めずに10月に再び下賜を申請。競走前日に宮内府から御紋付の楯が優勝楯として天皇賞とされることが許諾され、10月17日に初の「天皇賞」が開催される運びとなりました。これは、日本の競馬史において非常に象徴的な出来事と言えるでしょう。

組織や運営面でも動きがありました。3月には、元日本レースクラブの正会員であった人物が社団法人インターナショナルレースクラブの設立認可を取得し、横浜競馬場の使用権を巡って日本競馬会との対立が生じました。この横浜競馬場の払下げ問題は、7月に農林次官から大蔵次官への通牒により、旧所有者である日本競馬会に決定する形で一段落しました。一方、国内の馬匹輸送を担うため、日本競馬会は資本金を出資して日本馬匹輸送株式会社の設立準備を進め、8月に会社が設立されています。また、5月には畜産局内に競馬課が設置され、行政における競馬の位置づけも明確化されました。

競馬開催についても多様な試みが行われました。5月には福島競馬場で地方競馬が開催されたほか、6月以降には中央馬事会が主催する連合競馬が岩見沢、戸塚、霞ヶ浦、岡崎、長岡など各地の競馬場で実施されました。また、競走条件の見直しも行われ、6月にはサラブレッド3歳馬の競走出走制限撤廃が陳情されましたが、これは時期尚早とされ、最終的には制限回数を4回から6回に緩和するにとどまりました。

この年、将来の日本の競馬界を支える多くのインフラや人材、競走馬が誕生しています。4月には日本装蹄学校が創立され、装蹄技術者の育成が始まりました。また、11月には益田競馬場が開設されたほか、北海道の北見、大阪府の大阪、兵庫県の淡路、島根県の出雲大社、香川県の高松など、各地で新たな競馬場が開設されました（埼玉県春日部競馬場は閉鎖）。

そして、この年に生まれた競走馬の中には、後のクラシック戦線で活躍する世代（1950年クラシック世代）が含まれています。クモノハナやコマミノルといった馬たちがこの年に生を受けています。さらに、後に中央競馬で騎手や調教師として多大な功績を残す多くの人材、例えば小島太氏、尾形充弘氏、安田富男氏、田島良保氏らがこの年に誕生しており、戦後競馬の新たな時代を担う世代が育まれたことを示しています。

主要な競走としては、春に桜花賞、農林省賞典（東京）、平和賞が、6月には東京優駿競走（日本ダービー）が行われ、秋には復活した天皇賞（秋）、優駿牝馬（オークス）、農林省賞典四歳馬（京都）、中山大障害（秋）といった大レースが実施されました。特に、10月にはセントライト記念、11月にはカブトヤマ記念といった新たな重賞競走が創設され、競走体系も整備が進められています。

年の瀬迫る12月には、片山哲内閣によって「競馬制度の改正に関する件」が閣議決定されました。これにより、従来の日本競馬会による競馬は国が、馬匹組合連合会などによる競馬は都道府県が主務大臣の認可を得て行う、という方針が示され、現在の国営競馬と地方競馬の体制につながる将来の方向性が具体的に示されました。

1947年は、戦後の混乱の中で日本の競馬が再始動し、現代の制度や組織の基礎が築かれた、まさに「変革の年」であったと言えるでしょう。多くの課題を抱えながらも、未来への希望を込めて様々な新しい試みが実行された一年でした。

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