1948年の航空

1948年は、第二次世界大戦終結から数年が経過し、航空技術と民間航空が急速な発展を遂げた年として特筆されます。戦後の復興と冷戦の始まりという国際情勢が、この年の航空界の動きに大きく影響しました。

技術面では、ジェット機の性能向上が顕著でした。4月にはアメリカのF-86 セーバーのプロトタイプが緩降下ながら音速を超え、9月にはイギリスのパイロット、ジョン・デリーが実験機デ・ハビランド DH.108で降下中に、イギリス機として初めて音速突破に成功しました。さらに同月、リチャード・ジョンソン大尉の操縦するF-86 セーバーが、当時の速度記録となる時速1,079.84キロメートルを樹立しました。高高度飛行でも記録が生まれ、3月にはジョン・カニンガムがデ・ハビランド バンパイアで高度18,119メートルの記録を樹立しています。また、ヘリコプター分野でも進展があり、6月にはフェアリー ジャイロダインが時速200キロメートルの速度記録を達成しました。フランスでは、軸流圧縮式ターボジェットエンジンの原型であるスネクマ アター 101が開発されています。

新しい航空機も次々に初飛行しました。1月にはオーストラリアの軽輸送機デ・ハビランド・オーストラリア DHA-3 Droverが、6月には第二次世界大戦後初のフランス製ヘリコプターSE.3101が、7月にはイギリスの旅客機ビッカース バイカウントが、8月には爆撃機搭載用の小型戦闘機マクドネルXF-85 ゴブリンが、9月にはスウェーデンの戦闘機サーブ J29が、それぞれ最初の飛行を行いました。

組織やサービスの面でも重要な動きがありました。2月にはアメリカ空軍内に、大規模な空輸能力を担う軍事航空輸送部（MATS）が創設されました。同じく2月にはスペインの航空会社Aviacoが、11月にはイスラエルの航空会社エル・アル航空が設立されています。また、大韓民国初の民間航空会社である大韓国民航空社は、10月にソウルと釜山を結ぶ初の旅客便を就航させました。商業航空の長距離化も進み、4月にはエールフランスがロッキード コンステレーションを使用し、ニューヨークとパリ間の初の無着陸商業飛行を開始しました。

国際情勢に直結する出来事として、6月に始まったソビエトによるベルリン封鎖への対応があります。封鎖された西ベルリンへの物資供給のため、アメリカ空軍は6月26日から「ベルリン空輸」を開始しました。これは1949年9月まで続き、航空輸送の重要性を改めて示す大規模作戦となりました。軍事組織としては、5月にイスラエル空軍初の戦闘機部隊である101戦隊が編成され、アヴィア S-199による初の実戦参加を果たしています。また、12月にはオーストラリア海軍がイギリスから購入した空母シドニーが就役し、同国初の空母となりました。

インフラ整備も進み、7月には後のジョン・F・ケネディ国際空港となるニューヨーク国際空港が開港し、国際航空輸送の拠点としての役割を担うことになりました。一方、航空安全における課題も浮き彫りになりました。6月にはマカオ発のキャセイ・パシフィック航空機が、身代金目的のハイジャック犯によって墜落させられる事件が発生し、多くの犠牲者を出しました。これは民間航空における最初のハイジャック事件とされています。

これらの功績が称えられ、その年の航空分野で顕著な業績を残した人物に送られる賞として、デラボー賞は速度記録を樹立したリチャード・ジョンソンに、イギリス飛行クラブ金賞は音速突破を達成したジョン・デリーに授与されました。1948年は、技術的な飛躍、民間航空の拡大、そして冷戦下での空輸作戦など、航空史において多岐にわたる重要な出来事が凝縮された一年でした。

もう一度検索