エル・アル航空

エルアル航空：イスラエルの空の安全を守るフラッグキャリア

エルアル航空(EL AL Israel Airlines)は、イスラエルの国営航空会社として1948年のイスラエル建国直後に設立されました。イスラエル航空と呼ばれることも多く、テルアビブのベン・グリオン国際空港をハブ空港として、世界各地への路線を展開しています。創業当初はジュネーヴ路線から始まり、現在ではヨーロッパ、北米、アジア、アフリカへとそのネットワークを広げています。国内線ではエイラートへの路線も運航しています。

揺るぎない安全への取り組み：世界一安全な航空会社

エルアル航空は、その徹底したセキュリティ対策で世界的に知られています。イスラエルを取り巻く地政学的状況や、過去にハイジャックやテロの標的となった歴史を踏まえ、同社は並外れたレベルの安全対策を実施しています。

チェックインは出発3～4時間前が必須で、専門係員による入念な聞き込みが行われます。搭乗者の身元や旅程、荷物の内容などについて、複数の係員が詳細な質問を繰り返し行い、不審な点がないかを確認します。また、搭乗客名簿は、イスラエル国内の情報機関やFBIなどのデータベースと照合されます。さらに、手荷物検査は非常に厳格で、すべての荷物は金属探知機による検査と火薬反応検査を受け、機内預け荷物については減圧室を通過します。これらの検査は、政府関係者であっても例外なく実施されます。

機内には、武装したスカイマーシャルが搭乗し、コックピットへのアクセスも厳重に管理されています。さらに、地対空ミサイル対策として「フライト・ガード」と呼ばれるミサイル警報・妨害装置が全機に装備され、機体の構造自体も強化されています。

このような厳重なセキュリティ体制により、1968年以降、ハイジャック事件や旅客機墜落事故は発生していません。この実績から、「世界一安全な航空会社」と呼ばれる所以となっています。（ただし、1992年には貨物便の墜落事故が発生しています）。

運用機材と歴史：ボーイングとの深い結びつき

エルアル航空は、米国との深い関係から、長年にわたってボーイング社の航空機を多く採用してきました。顧客番号は58で、747-458や777-258ERといった型式名で知られています。近年はボーイング社の事故や品質問題の影響でエアバス機導入も検討されましたが、2024年6月にはボーイング737MAXの導入を発表しています。

過去には、ブリストル ブリタニア、ボーイング707、720、737、747、757、767といった様々な機種を運用してきましたが、2019年にはボーイング747の営業運航を終了しました。

就航路線と提携航空会社：世界中に広がるネットワーク

エルアル航空は、オーストラリアを除くすべての大陸に就航しています。ただし、周辺のアラブ諸国との領空問題により、航路はこれらの国を避けて設定されています。国交のあるエジプトへのフライトを過去に運航していた際には、機体に国名や社名を表記しない専用機を使用していました。

日本路線は、関西国際空港や成田国際空港へのチャーター便、そして2023年3月1日からは、成田国際空港とベン・グリオン国際空港を結ぶ定期便の運航を開始しました。しかし、パレスチナ情勢の悪化に伴い運休となり、2024年3月6日より運航を再開しましたが、情勢により運航の安定性に影響がある可能性があります。

航空連合には加盟していませんが、アメリカン航空、イベリア航空、スイス インターナショナル エアラインズなど、多くの航空会社とコードシェア協定を結んでいます。

エピソード：アイヒマン逮捕とソロモン作戦

エルアル航空は、イスラエルの歴史に深く関わる出来事にも関わってきました。ナチス親衛隊の元中佐、アドルフ・アイヒマンのイスラエルへの移送には、エルアル航空のブリストル ブリタニア機が使用されました。また、1991年の「ソロモン作戦」では、エチオピアからユダヤ人の大規模な移送を行い、ボーイング747-400型機で1フライト1087人（新生児3名を含む）という驚異的な輸送人数記録を樹立しました。

ハイジャック事件と事故：安全対策の進化

エルアル航空は過去にハイジャック事件に遭い、その経験を踏まえた高度なセキュリティ対策を構築してきました。1968年にはハイジャック事件が発生したものの、その後、同様の事件は発生していません。安全対策の進化を物語るエピソードでもあります。

エルアル航空は、その歴史と厳しいセキュリティ対策、そして世界各地へのネットワークを通じて、イスラエルの空の安全を守り続けています。今後も、安全を最優先に、世界中の人々を繋ぐ役割を果たしていくでしょう。

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