1960年ニューヨーク空中衝突事故

1960年ニューヨーク空中衝突事故の概要

1960年12月16日、アメリカ合衆国ニューヨーク上空で、2機の旅客機が衝突するという痛ましい航空事故が発生しました。この事故では、ユナイテッド航空（UAL）826便とトランス・ワールド航空（TWA）266便が衝突し、乗員乗客合わせて134名全員が死亡するという、当時としては最悪の空中衝突事故となりました。

事故発生の状況

事故当日、UAL826便はシカゴからニューヨーク・アイドルワイルド空港（現在のジョン・F・ケネディ国際空港）へ向かうDC-8-11型機で、乗員7名、乗客77名が搭乗していました。一方、TWA266便はオハイオ州デイトンを出発し、コロンバスを経由してニューヨーク・ラガーディア空港へ向かうロッキードL-1049スーパーコンステレーション型機で、乗員5名と乗客39名が搭乗していました。

2機は午前10時33分、スタテンアイランドのミラー空軍基地西方約1マイル、高度5,000フィートの雲の中で衝突しました。UAL機は時速560kmで飛行中、着陸のために左旋回していたTWA機に後方から覆い被さるように衝突しました。衝突の衝撃でUAL機のエンジンがTWA機の客室を直撃し、機体を破壊したことが、残骸の調査から判明しました。

事故後の状況

TWA266便は衝突時に空中分解し、螺旋状に落下してミラー基地の敷地内に墜落。UAL826便は操縦不能となり、衝突地点から北東へ8.5マイル離れたブルックリンのパーク・スロープに墜落しました。UAL機の墜落は、10棟のアパートや教会、商店などを破壊し、地上でも6名の犠牲者が出ました。

事故発生時、TWA機の乗客3名が一時生存していましたが、救助後に死亡。UAL機では、雪の塊に落下した11歳の少年が救助されましたが、重度の火傷と打撲により翌日死亡しました。この事故で、2機の乗員乗客全員と地上の住民6名の合計134名が犠牲となりました。

この事故は、当時としては最悪の空中衝突事故であり、DC-8型機の全損事故としては初、民間定期航空路に就航したアメリカ製ジェット旅客機としては初の死亡事故となりました。また、UALとTWAは1956年にもグランドキャニオンで空中衝突事故を起こしており、2機の搭乗者合計が偶然にも同じ128名であったことも特筆されます。

なお、アイドルワイルド空港では、この事故から2ヶ月の間に、さらに2件の航空事故が発生しており、この事故が連続事故の最初のものとなりました。

事故原因

事故の原因は、UAL機のパイロットが計器表示を誤解したことによるパイロットミスでした。UAL機は、本来の航路から約15kmも逸脱して飛行していました。また、当時、航空管制がこの異常を把握できていなかったことも、事故を未然に防げなかった要因の一つです。

事故当時の気象は、小雨、霧、雪が混じり、計器飛行方式による飛行が必須でした。UAL機は、管制から通常の航路を短縮する許可を得て飛行していましたが、搭載していたVOR受信機の1台が故障していたため、航法にADFを使用していました。午前10時25分、管制からプレストンまで約20kmショートカットする許可を得た際、ADFによる計器表示の解釈を誤り、自機の位置を錯覚したことが、最大の事故要因となりました。

事故後の対策

この事故を教訓に、アメリカ国内の航空管制システムは全面的なレーダー管制が導入されました。また、アメリカ上空を飛行する5,670kg以上の航空機にはトランスポンダの設置が義務付けられ、航法ビーコンの配備も進められました。これにより、航空機の位置を正確に把握し、空中衝突を防止するための対策が強化されました。

参考文献

デビッド・ゲロー 「航空事故」（増改訂版） イカロス出版 1997年 37頁～40頁

外部リンク

Pillar of Fire: Recalling the Day the Sky Fell, December 16, 1960 by Nathaniel Altman, from the Park Slope Reader
Civil Aeronautics Board Aircraft Accident Report on the collision from the Department of Transport's Special Collections
Aviation Safety Network report on Flight 826
Aviation Safety Network report on Flight 266
Death in the Air, Time, December 26, 1960.

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