1962年イギリスグランプリ

1962年7月21日、イギリス・エイントリー・モーターレーシング・サーキットで、F1世界選手権第5戦、1962年イギリスグランプリが開催されました。このレースは、エイントリーサーキットにおけるイギリスGPの最後となり、翌年から1986年まではシルバーストン・サーキットとブランズ・ハッチが交互に開催地を務めることになります。

スコットランド出身のジム・クラークが、ロータス25を駆り、レースを完全に支配しました。クラークはスタートからフィニッシュまでトップを譲ることなく、後続に大差をつけて圧勝。これは、クラークのレースにおける特徴的な勝利パターンのはじまりともいえます。開幕戦からBRM、クーパー、ロータス、ポルシェと、毎戦優勝車が変わる展開の中、ロータスが早くも2勝目を挙げたのです。クラークは周回を重ねるごとに後続との差を広げ、その圧倒的な速さで観衆を魅了しました。

一方、フェラーリはイタリア国内での労働争議の影響を受け、フィル・ヒル1台のみの参加という苦しい状況にありました。このため、エントリーしていた3台のうち、カーナンバー4と6は使用されませんでした。全車ダンロップタイヤを装着して臨んだレースでは、依然として直列4気筒エンジンを使用するマシンが6台出場していましたが、その中で最高位はジャッキー・ルイスの10位にとどまりました。

2位には[ジョン・サーティース]]がローラで入賞しました。サーティースは10周目に2速を失うトラブルに見舞われましたが、粘り強い走りで表彰台を獲得しました。フランスGPとソリチュードGPを連勝していたダン・ガーニーは、スタートで3位につけましたが、クラッチのトラブルにより順位を落とし、9位に終わりました。ガーニーのチームメイト、ヨアキム・ボニエはディファレンシャルのトラブルでリタイアを喫しました。3位には[[ブルース・マクラーレン]が入り、12周目にガーニーをオーバーテイクして表彰台を獲得しました。

グラハム・ヒル（BRM）はレース終盤、ジャック・ブラバムに追いかけられましたが、4位を死守しました。ブラバムは40周目以降、右足の火傷による痛みに苦しみながらも5位でフィニッシュしました。ブラバムは、このレースで自製マシンであるブラバムBT3の投入を予定していましたが、レース前日の午前3時に排気システムの誤送達が発覚。昼夜を問わない作業も実らず、投入を断念せざるを得ませんでした。BT3のデビューは、2週間後のドイツGPに持ち越しとなりました。

イネス・アイルランド（UDT・レイストール・レーシングチーム）にとっては、おそらく最大の失望を味わった一日となったでしょう。予選3位でフロントローを獲得した彼のロータス24-クライマックスでしたが、1周目にギアシフトが故障し、3速しか使えなくなってしまいました。ピットインしての修理により時間をロスし、最下位の16位に終わりました。トレバー・テイラーも、スタート直後にキャブレターの緩みでピットインを余儀なくされ、8位でレースを終えました。フィル・ヒルは新型6速ギアボックスを搭載したフェラーリをドライブしましたが、イギリス勢には太刀打ちできず、イグニッショントラブルでリタイアに終わりました。予選では、ジム・クラークがポールポジションを獲得しました。

このレースは、ロータスの優位性を示すとともに、イギリス勢の強さを改めて印象付ける結果となりました。また、各チームの技術開発競争、そしてドライバーたちの執念が凝縮された、記憶に残る一戦となりました。

もう一度検索