1963年の航空

1963年の航空史：技術革新と宇宙への挑戦

1963年は、航空技術の進化が加速し、宇宙開発への挑戦も新たな段階を迎えた極めて活発な一年でした。世界各地で新型機の開発や初飛行が行われ、飛行記録の更新、そして宇宙への進出など、様々な分野で注目すべき出来事が相次ぎました。

新型航空機の登場と初飛行

この年、いくつかの重要な航空機が初めて空へ飛び立ちました。まず、年明け早々の1月にはビジネスジェットの先駆けとなるエアロコマンダー 1121 ジェット・コマンダーが初飛行。この機体は後にイスラエルでIAI ウェストウィンドとして長期間製造されることになります。また、ヘリコプター分野では、新たなローターシステムのテストベッドとして開発された西ドイツのベルコウ Bo 46が1月30日に初飛行しています。

旅客機では、アメリカの三発ジェット旅客機、ボーイング727が2月9日に待望の初飛行を成功させました。これはその後の航空輸送に大きな影響を与える機体となります。夏にはイギリスの短距離向けジェット旅客機、BAC 1-11も8月20日に初飛行を果たしています。

軍用輸送機の分野でも重要な動きがありました。フランスとドイツが共同開発したC-160 トランザールが2月25日に、そしてアメリカの大型ジェット輸送機ロッキードC-141 スターリフターの原型機が12月17日にそれぞれ初飛行しています。イギリスからも軍用輸送機ホーカー・シドレー アンドーバーが12月21日に初飛行しています。

実験的な試みも見られました。4月には前進翼を持つビジネスジェットHFB 320 ハンザジェットや、層流制御技術の研究のために改装された実験機X-21がそれぞれ初飛行を行っています。

垂直離着陸技術の進展

垂直離着陸（VTOL）機に関する研究も進みました。ソビエト連邦の試作VTOL機であるYak-36が1月9日に初めて安定したホバリングに成功。フランスの垂直離着陸実験機バルザック Vは、3月18日に垂直離陸から水平飛行へのスムーズな遷移飛行を実現し、この分野の技術的可能性を示しました。

宇宙開発の新たな記録

宇宙開発競争も白熱しました。5月にはアメリカのマーキュリー計画最後の宇宙飛行が行われ、ゴードン・クーパーが搭乗したフェイス7号が34時間以上の単独飛行を達成しました。ソ連も宇宙飛行の記録を更新し、6月にはヴァレリー・ブィコフスキーがボストーク5号で当時の最長飛行記録を樹立しました。そして、同じく6月にはワレンチナ・テレシコワがボストーク6号に搭乗し、人類初の女性宇宙飛行士として歴史に名を刻みました。さらに、7月26日には世界初の静止衛星となるシンコム2号が打ち上げられ、通信衛星技術の発展に道を拓きました。

飛行記録への挑戦

速度や高度の記録への挑戦も続けられました。5月1日にはアメリカの女性パイロット、ジャクリーン・コクランがF-104G スターファイターを操り、100kmコースでの女性速度記録となる平均1,937km/hを樹立しました。高高度飛行の分野では、アメリカのX-15実験機が活躍。6月にはロバート・ラッシュウォースが高度28.5万フィートを超える飛行を行い、さらに7月にはジョセフ・ウォーカーがX-15Aで106,000m、そして8月には107,960mと高高度飛行の世界記録を連続して更新しました。

軍事・民間航空の動き

南ベトナムでは、1月2日にアプバクの戦いが発生し、ヘリボーン戦術への待ち伏せ攻撃が行われるなど、航空機が実戦で果たす役割が浮き彫りとなる出来事もありました。日本では、航空自衛隊にF-104を装備した最初の飛行隊となる第201飛行隊が3月5日に編成されました。民間航空分野では、12月15日にヨルダンで新しい航空会社、アリア（後のロイヤル・ヨルダン航空）が設立されています。

一方、将来が期待されていた宇宙偵察機計画であるX-20ダイナ・ソア計画が12月10日に中止されるという動きもありました。

航空界の栄誉

この年、航空分野で顕著な功績を上げた人々が表彰されました。フランス飛行クラブ大賞とFAIゴールド・エア・メダルはジャクリーヌ・オリオールが受賞。ハーモントロフィーは宇宙飛行士のゴードン・クーパーと女性パイロットのベティ・ミラーに、デラボー賞は宇宙飛行記録を更新したヴァレリー・ブィコフスキーに贈られています。イギリス飛行クラブ金賞はジェフリー・デハビランドが受賞しました。

1963年は、新型機の開発から宇宙への挑戦まで、航空と宇宙の領域で目覚ましい進歩が見られた年であり、その後の発展に向けた重要な基盤が築かれた時期と言えるでしょう。

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