1965年メキシコグランプリ

1965年メキシコグランプリ：ホンダF1の栄光

1965年10月24日、メキシコシティ郊外のマグダレナ・ミクスカで開催されたメキシコグランプリは、F1世界選手権において幾多のドラマを生み出したレースとして記憶されています。このレースは、1.5リッターエンジン規定最後のレースであり、ホンダF1チーム、そして日本のモータースポーツ界にとって歴史的な転換点となりました。

過酷な環境とホンダの挑戦

標高2,240mというメキシコシティの高地は、薄い空気によってエンジンパワーの低下を招きやすい過酷な条件下でのレースでした。この環境を克服すべく、ホンダチームは燃料噴射装置の混合比調整に全力を注ぎ込みました。チーム監督の中村良夫は、市販車開発から現場復帰を果たし、このレースに全てを懸けていました。予選ではジム・クラークがポールポジションを獲得しましたが、ホンダのリッチー・ギンサーも2列目3番手と好位置につけていました。

劇的な展開とギンサーの快走

決勝レースは、序盤でポールポジションのクラークがエンジントラブルにより後退する波乱の展開となりました。その隙を突いたギンサーはすぐにトップに躍り出ます。さらに、BRM勢のグラハム・ヒルとジャッキー・スチュワートもエンジントラブルとクラッチトラブルによりリタイア。ギンサーの最大のライバルであったガーニーとの一騎打ちとなりました。ギンサーは、ガーニーの猛追を最後まで振り切り、見事2秒89の差で優勝を飾りました。

歴史的勝利の余韻

この勝利は、ギンサーにとってF1通算47戦目、ホンダにとって11戦目、そしてグッドイヤータイヤにとってもF1初優勝という、幾重にも及ぶ歴史的快挙でした。チームメイトのロニー・バックナムも5位入賞を果たし、チームにとって大きな収穫となりました。レース後、ロータスのコーリン・チャップマンは中村監督に直接祝福の言葉を贈り、中村監督は東京のホンダ本社に「Veni, Vidi, Vici（来た、見た、勝った）」と電報を送信しました。この勝利は、ホンダのF1挑戦における大きな転換期となり、日本のモータースポーツ界に新たな地平を切り開いたのです。

詳細データ

開催日: 1965年10月24日
開催地: マグダレナ・ミクスカ、メキシコ
周回数: 65周
優勝者: リッチー・ギンサー（ホンダ）
2位: ダン・ガーニー（ブラバム）
3位: マイク・スペンス（ロータス）
ファステストラップ: ダン・ガーニー（1:55.840）
ラップリーダー: リッチー・ギンサー（全周回）

レースの背景と意義

このメキシコグランプリは、1.5リッターエンジン規定の最終戦であり、イギリス勢が勝利を収めることなく幕を閉じました。ホンダは、このレースで技術力とチームワークの高さを証明し、世界に日本のモータースポーツ技術の進歩を示しました。過酷な環境下での勝利は、ホンダの技術力と挑戦精神の象徴であり、日本のモータースポーツ史に燦然と輝く一ページとなりました。 また、このレースは、中村良夫監督の復活と、グッドイヤータイヤのF1初勝利をもたらした重要なレースでもありました。 各チームの戦略、ドライバーの技量、そして車両開発における技術革新が複雑に絡み合った、非常に記憶に残るレースであったと言えるでしょう。

参考文献

en:1965 Mexican Grand Prix
林信次『F1全史 1961-1965』ニューズ出版、1997年
中村良夫『F-1グランプリ ホンダF-1と共に 1963-1968 (愛蔵版)』三樹書房、1998年
アラン・ヘンリー『チーム・フェラーリの全て』早川麻百合+島江政弘（訳）、CBS・ソニー出版、1989年12月
Mexico 1965 - STATS F1
Mexican GP 1965 - grandprix.com

もう一度検索